嘘つきアーニャの真っ赤な真実 米原万里

 

 第33回大宅壮一ノンフィクション賞受賞

 

あらすじ

1960年プラハ。小学生のマリはソビエト学校で個性的な友達と先生に囲まれ、刺激的な毎日を過ごしていた。男の見極め方を教えてくれるギリシャ人のリッツァ。嘘つきなのにみんなに愛されているルーマニア人のアーニャ。クラス1の優等生、ユーゴスラビア人のヤスミンカ。それから30年後、東欧の激動で音信の途絶えた3人の親友を探し当てたマリは、少女時代には知り得なかった真実に出会う。

 

民族主義社会主義の時代

米原万里チェコを去ってから、30年の間にソ連は崩壊し、ユーゴスラビアも民族紛争が勃発し、今では5か国に分裂している。ソ連のインターナショナルスクールに通う子供たちは小さいながらもそれぞれ国や民族を背負っていて、政治の重い影に覆われていた時代。「実は資本主義圏の人間とは、痕跡が残るような交際をしてはならないと親や周囲から厳しく牽制されていた... 」という一節も。いまではロシアも西側のような世界になりつつあるが、主人公4人を通して、当時の時代背景を描くストーリーに引き込まれて行く。

 

いつもの米原流も健在

生物学の授業で、先生から次のような質問があった。「人体の器官には、ある条件の下では6倍にも膨張するものがあります。それは、なんという名称の器官で、またその条件とは、いかなるものでしょう?」
質問に答えるよう言われたターニャ。「どうしたの、ターニャ、何をモジモジしているの?」。ターニャは下を向き、顔を真っ赤にして身をよじっている。大丈夫だろうか。「いい加減にしなさい、ターニャ。真面目に答えなさい」。「だって、あたし、恥ずかしくって答えられません」。その瞬間、彼女が何を想像して身もだえているのかを察知して教室は爆笑した。先生は、矛先をヤスミンカに向けた。ヤスミンカは、即座に立ちあがって簡潔に答えた。「はい。突然明るいところが暗くなったような条件下の瞳孔です」。「その通り、ヤスミンカの答えは正解です。瞳孔は、ちょうど写真機の絞りの役割を果たしているのですね」。先生はターニャに言い添えた。「そのおつむに浮かぶ事柄が上品とは言い難いのは偉大な、おじい様のおかげかしら」と。

 

YouTubeに残る唯一の米原万里

生前の米原万里の姿が記録されている貴重な映像が、YouTube に残っている。ちょうど、今回の著書「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」に関する内容です。

 


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