『ほんとうに頭がよくなる「速読脳」のつくり方』 苫米地英人

 

 

ほんとうに頭がよくなる「速読脳」のつくり方 (PHP文庫)

ほんとうに頭がよくなる「速読脳」のつくり方 (PHP文庫)

 

 

困窮から抜け出したい
人生をより豊かなものにしたい
そう望む人への道標


「速読脳のつくり方」より大切なもの

 いきなりですが、本書におけるテーマは「速読について」というより、どうも別にありそうです。  時代が大きく変化するいま、どうしたら困窮から抜け出せるのか、そんな課題に「年収と読書量は正比例する」は何を示唆しているのか、また恐竜はなぜ滅びたのかを例にとり、生き残り策はあるのか、について明快な回答を示しています。そして最後に、もう一つの職業「人の役に立つ職業」をもちなさい、という。

 

年収と読書量は正比例する

 読書習慣をもつだけで、情報勝者になれるのがいまの日本だ。日本経済新聞社産業地域研究所の調査によると、年収の高い人ほど書籍や雑誌の購入費が高いという結果が出ている。一部の富裕層とワーキングプア。日本人の収入格差はこれからさらに広がっていくことだろう。富める者はさらに富み、貧しい者はそこから抜け出す術すら見いだしにくい状況が今後も続く。
 しかし、「年収と読書量は正比例する」は、その状況を打破するうえで、とても示唆に富んでいる。どうやったらいまの困窮状態から抜け出せるのかと、誰もが模索している中で、「ともかくむさぼるように本を読め、そうすれば出口は必ず見つかる」といっているわけだから。まずは速読など使わなくていいから、本を読むこと、そうすれば自ずと知識量は増えていく。その知識は速読をする際にも有利に働き、さらに多くの本が読めるようになる。

 

日本人の半数が本を読まない

 文化庁が行った「国語に関する世論調査」を見ると「1か月に1冊も本を読まない」と答えた人が全体の46.1%にものぼっている。なんと日本人の半数近くが本を読む習慣がない。また、「月に1、2冊は読む」と答えた人が36.1%、「月に3、4冊」が10.7%という結果。このことから月に3冊読めば、読書家として胸を張れるのがいまの日本だということ。

 

なにを読めばいい?

 読むジャンルについては、小説がベストだという。小説が IQを高めるのには最高の活字媒体だから。「小説を読んで涙を流す」ことで脳は登場人物のキャラクターや境遇を脳内空間の中でしっかり構築している。でなければ、涙を流すことなどできない。文字情報を脳内で、立体的に臨場感をもって構築する能力は、そのままIQを上げるのに直結する、と。
 しかも、小説は情報量も莫大。例えば、時代小説や経済小説は、綿密な下調べをしたうえで書かれている。その1冊を書くために作者は数十冊もの本を読み、資料をあさり、関係者に取材してから書いている。あなたの代わりに作者が本を読み、取材までし、自分の経験談まで吐き出してくれて1冊にまとめたのが小説なのである。

 

恐竜は滅びる !?

 日本の新聞業界、出版業界は今後も大きく変わっていくだろう。その変わり方は決していい方向ではない。出版、新聞各社の迷走に代表されるように、氷河期に向かって進んでいく。一般企業にも言えることかもしれない。つまり、恐竜は滅びる。
 時代が大きく変化するとき、大型化してしまった動物は生き残ることができないというのは、アメリカの新聞業界がすでに証明してしまった。その逆に氷河期に強いのは小型の動物だ。小型の書店、編集プロダクションといったフットワークの軽いところは、大きな利益を見込める可能性が出てくる。

 

小型化と知識量

 さて、一番重要なのはそれがなにを意味するのかということ。私たちはこの現実をにらみながら、どう生きていくかということ。
 サバイバルのヒントは何だろう。それは小型化と知識量だと言う。大型動物が倒れる中で、小型動物がそのニッチに入り込むことで生態系の主役の座を奪うことができる可能性があるということ。生き残ることが、主役の座を奪うことにつながる。

 

生き残り策

 ところで、恐竜はなぜ滅んだのか?  その後、地球上で繁栄するほ乳類たちは、なぜ氷河期を生き残れたのだろうか。答えは、地球環境が変わった後に恐竜のような大型動物には目の前にあるエサがエサとして見えていなかったということ。エサとはこういう形のものだという思い込みが、目の前にある食べ物を認識できなくさせてしまった。要は「本は紙でつくるもの」「著者印税は〇%」といった思い込みだ。恐竜はこういうものから外れるものをエサと見なさない。だから死ぬのだ。目の前にある草や昆虫、もしかしたら石だって食べられるかもしれない。しかし、ティラノサウルスには肉しかエサではなかった。肉しか食べ物として記憶できない。
 白亜紀末、宇宙から隕石が落下して地球の環境が変わったときに、彼らは食べ物がなくなったと思ってしまったがそうではない。食べ物がなくなったのではなく、食べ物の形が変わっただけ。ここに気づかなければならない。では、変わってしまった食べ物に気づくためにはなにが大切なのかといえば、結局ここでも知識量になる。知識の質ではなく、あくまで必要なのは知識の量。圧倒的な知識量がまずあって、その裏付けの上でしか、これらの「質」は評価されないということだ。

 

必ず出口は見つかる

 格差社会の現状において、困窮から抜け出したい、より人生を豊かなものにしたい、そのためには「ともかくむさぼるように本を読め、そうすれば出口は必ず見つかる」と。そして「小型化と知識量」という考え方も重要になるでしょう。いずれにしても、たくさん本を読むこと、そこに答えが必ずあるのだと。

 

もう一つの自分をもて

 読書の真髄は、新しい知識に触れることであり、新しい考え方に触れること。あなたの人格では見えなかったものが、著者の人格になる読み方なら見えてくる。たとえば、太宰治を読む前と、読んだあとの世界は違って見えた気がしませんでしたか。それは三島由紀夫芥川龍之介などもしかりです。読書をすればするほど、著者になりきることが容易になっていく。
 こうした自分以外の人格をもつことは、建設的なことに使うべき能力です。ここで著者は、脳的な理由でもう一つ仕事をもて、もう一つの人格をもて、といってます。それはお金になるか、ならないかは問題ではなく、二つの人格をもつこと、そのことにこそ意味があるのだという。

 

儲かることを優先してはいけない

 もう一つの人格をもつとは、二つの職業をもつこと。もう一つの「職業」とは、お金儲けのためでなく「人の役に立つ」ということで、要はお金にならなくても、人の役に立てば「職業」なのです。
 こう聞いて「それは理想論で、やっぱりお金にならないのは職業とはいえない」と思ったとしたら、それは、あなたが従来の貨幣経済に洗脳されている証拠です。
もう一つの人格は徹底的に人のために使ってみませんか。人類がみなそう思えば、世界は間違いなく変わるでしょう。あなたの親もあなたの子供も、そしてあなた自身も住みやすい世界になっている。もう一つの人格の報酬をしいていうなら、この住みやすい世界ということになるのだと思います。これは報酬の中でも、最高のものではないかと思うのです。