『変身』 カフカ 不思議な海外文学最高傑作


あらすじ

 ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっているのを発見する男、グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になってしまったのか...
 謎は究明されないまま、ふだんと変わらない、ありふれた日常がすぎていく。事実のみを冷静につたえる、まるでレポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様ざまな解釈を呼び起こした。海外文学最高傑作のひとつ。(本書より)1915年作品

 

フランツ・カフカ

 1883年チェコプラハユダヤ人の商家に生まれる。プラハ大学で法学を修めた後、肺結核で夭折するまで労働災害保険協会に勤めた。人間存在の不条理を主題とするシュルレアリスム風の作品群を残している。現代実存主義文学の先駆者。享年40歳。(1883-1924) 他に「審判」「城」「失踪者」など。短編小説多数。
*夭折(ようせつ)若くして亡くなること。

 

解釈がたくさんある不思議な小説

 わずか100ページにも満たない本書は、あっという間に読めてしまうけど、なんとも言えない読了感です。虫とあるけど、朝起きたら突然、巨大なムカデになっていたというもの。読んでいて不思議だと思ったのは、どうして犬や猫でなく虫なのか、それと周囲の家族たちが誰も不審に思わないこと、また著者のカフカが、なぜ変身したのかを説明してません。
 本書の最後のページにある解説に少し納得のいく説明(下記)がなされていますが。
とにかく海外文学の最高傑作なんです。いつも読みやすいものばかりでなく、少しづつ難解なものにも挑戦していくことが、さらに血肉になっていくということです。

解釈の例(本書より)

カフカは『変身』のテーマは息子たちであると明言しています。

① 私生活と職業生活について
グレーゴルはセールスマンとしての職を拒否し、自由に生きたいと考えているが、そのように振舞うことのできない彼の苦悩が『変身』で描かれている。

② 家族物語ー父親と息子との対立
グレーゴルは父親が投げたリンゴの傷が原因となって死ぬ。カフカ自身とその実在の父親との関係を連想させる。

形而上学的世界
変身という現象はグレーゴルの本来の自己が、その日常生活、すなわち世間の人の中に衝撃的に入り込んできたことを意味すると。

マルクス主義と宗教的解釈
『変身』をマルクス主義的に解釈し、資本主義社会における公的生活と私的生活との矛盾が描かれているという解釈。また神と人間の関係が暗示されているという宗教的な見方もあるという。

 

こんな解釈も

読書メーターシュラフさんが、面白い解釈を述べられていたので引用させて頂きます。(以下)

 変身したのはグレーゴルではなく...

いったい本当に変身したのは誰なのだろう。
グレゴールは虫に変身したのはたしかなのだが、彼の思考はまったく変わってはいない。虫になったとしてもグレーゴルはグレーゴルなのである。
一方、彼の父母と妹はまったく変わったではないか!
以前にグレゴールが家計のすべてを支えていたときには生活力がゼロであったように思えたのが、家計の危機によって家族みんなは働きに出た。
なんと見違えるようになったことだろう。父はしゃっきりして、ひ弱だった妹もすっかり美人のしっかり屋さんになった。みんなまるで別人へと変身してしまったようである。
 

 

変身 (新潮文庫)

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