きょうも読書

言葉の迷路を彷徨う

「バベルの塔」展 東京都美術館 

 

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神が人間の言葉を混乱させる

 人が「天まで届く塔のある町を建てよう」と考えたのは 、煉瓦を焼くという新技術、そして漆喰よりずっと粘着力のあるアスファルトという新素材を発見したからでした。
 ところが、人間の計画を知った神は「降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉を聞き分けられぬようにしてしまおう」(旧約聖書11章7節)と考えているのですから、その計画を中断させなければならない悪い企てと見ていることになります。
 「天まで届く塔のある町を建てる」こと自体は悪いことではないはずでした。いったいどこが神の目に不適当と映ったのでしょうか。

 

自分の名にこだわった人間

 唯一の可能性は、「天まで届く塔のある町を建てよう」のあとに「我々の名をつくろう。そして全地に散らされることのないようにしよう」(11章4節)とあることでしょう。
 大事業を成し遂げれば、自分の名前を残したくなるのはごく自然なことですね。でも、神はそこに落とし穴を見ていました。人間が自分の名にこだわるあまり、神の名が忘れ去られるなら、神との対話もあと回しにされてしまう。その時には、私益や国益がぶつかり合う混乱した社会になってしまう。
 こうして名前に執着した人間たちは、互いの言葉を聞き分けることができなくされた上で、全地に散らされてしまいました。この町は、神が言語を混乱(ヘブライ語で「バラル」)させたことから「バベル」と呼ばれるようになりました。

 

ブリューゲルの「バベルの塔

 さて、東京都美術館で開催の「バベルの塔」展は、平日でも大勢の人で人気があります。「バベルの塔」自体の作品は他にも多数あるのですが、やはりこのブリューゲルの一枚が浮かびます。実際の作品のサイズは、59.9×74.6cmと小さいのですが、画面いっぱいにそびえる塔の威容。描かれている人の数は約1,400人とも。虫眼鏡でのぞきたくなるほど、緻密でリアルな細部の描写。そこに描かれた壮大な世界観と、謎多き画家の魅力をぜひ、会場で実感してください。7月2日まで開催です。

 

 

(図説雑学旧約聖書より引用)