『ぼくらの頭脳の鍛え方』 立花隆 佐藤優

 

「知の巨人」と「知の怪物」が
空前絶後のブックガイドを作り上げた

 

必読の教養書400冊 

 今、何をどう読むべきか? どう考えるべきか? 「知の巨人」立花隆と「知の怪物」佐藤優空前絶後のブックリストを作り上げた。自分の書棚から百冊ずつ、本屋さんの文庫・新書の棚から百冊ずつ。古典の読み方、仕事術から、インテリジェンスの技法、戦争論まで、21世紀の知性の磨き方を徹底指南する。
 掲載の400冊の書籍については、ぜひ本書を読んでください。教養のための基本書が満載です。

 

「知」の世界への入場券 

立花 脳と読書・読字の相関は脳科学の世界では常識です。日本語の場合、平仮名があって、片仮名があって、漢字がある。それで音と文字と意味とがそれぞれ微妙にずれている。脳はこうしたずれがあればあるほど、その複雑さに順応するために高次の発達をとげるんです。だから日本人の脳はすごくいい脳になった。かつて日本語をローマ字にしてしまえとか、志賀直哉が「日本語を廃止して、フランス語を採用せよ」なんて言いましたが、とんでもない話です。

 佐藤 毛沢東の「書物主義に反対する」(1967年出版)で、彼は文化大革命のときに、民衆を愚民化して操りやすくするためにはリテラシー、読書能力を落とせばいいと考えた。本を読めば読むほど人間は愚劣になる、余計なことは読んで考えるな、まずは行動せよ、と過去の論文を取り出して説いていたのです。中国のように本を読むのはエリートという伝統があるところで、読書文化を絶ち、思考する脳回路を停止させようとしたんです。

 

ウェーバー『職業としての政治』の本質

  立花 今、日本の政治は混迷を深めていますが、マックス・ウェーバーの『職業としての政治』(角川文庫)を挙げました。これは訳によって一番大事なところの訳語がズレている。どの部分かというと、政治で一番大切なのは目で距離を測ること、目測能力だと言っているところ。「目測」という訳語がいちばんしっくりくるんですが、そう訳されていないものが多い。この政治における目測の重要性をちゃんと分かって引用していたのが中曽根康弘です。
剣道では相手の剣の切っ先を見切ることが大事なんです。相手の切っ先の限界より踏み込むと危険だから、その限界を見切る能力が一番の根本なんですね。先ほどの目測力は、この見切りの能力と同じことです。

 

古典や文学について

立花 僕は大学生のときの読書の八十パーセントが小説だったんです。ところが文藝春秋に入社したせいで小説を読むのをやめてしまった。当時の上司に「おまえ、小説ばっかり読んでちゃダメだぞ」と言われて、小説以外の本を読み始めたんです。そしていかに自分がモノを知らなかったか痛感しました。
それでも挙げ出すときりがないんですが、近松や朔太郎、芭蕉など、どれか一作品を挙げることはできませんが、日本語としてすばらしい。日本語の魅力を知るためにもこの三人の作品は読むべきです。

 

インターネット時代の読書

立花 ネット空間にも、本になっているものより水準の高い論文などが山のようにあります。ただ、そういう水準のものに出会う確率は相当低い。グーグルでキーワードを入れて検索するにもやはり基本的な教養が必要です。

 

戦争こそ必須の教養

立花 戦争では、民族も国民性も科学技術も文明も、すべてが凝縮されて表れますからね。戦争について知ることは現代人にとっても必須の教養でしょう。戦争において、弾薬とか食糧をいかに補給するかが決定的な役割を果たすことを明らかにしたのが、『補給戦ー何が勝敗を決定するのか』(中公文庫)です。十九世紀のナポレオン戦争から第二次世界大戦ノルマンディ上陸作戦まで、補給戦がどれほど大切かを分析しています。日本軍も補給戦に失敗したんです。その実例が、『失敗の本質ー日本軍の組織論的研究』(中公文庫)。太平洋戦争では戦闘で死んだ兵士より、餓死した兵士が圧倒的に多いんですね。

 

立花隆による「実践」に役立つ十四条(*抜粋)

*金を惜しまず本を買え
*ひとつのテーマについて、必ず類書を何冊か求めよ
*自分の水準に合わないものは無理して読むな
*速読術を身につけよ
*本を読みながらノートを取るな
*注釈を読みとばすな
*疑って読め
*何をさしおいても本を読む時間をつくれ

 

 

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)