きょうも読書

言葉の迷路を彷徨う

『接待の一流』 田崎真也 おもてなしは技術です

 

いい店を頼むよ ...
この店僕も初めてなので
なんでこんな店を予約したんだ
あの店にいけば安心して任せられる
この料理でいい
こちらの方、ワインに詳しいので選んでもらって

 
こんな発言は「もてなしベタ」

 接待の席で、こんな発言をしたことのある人は、立派な「もてなしベタ」。世界一のソムリエが明かす、もてなし上手になるための心遣いと技の数々です。

 
大切なデートにも役立つ

 会社の接待だけでなく、大切なデートやちょっとした飲み会、食事会にも役立つことがたくさん書かれています。お店の選び方から席の配置、お料理の決め方、ホストとゲストの関係など、参考になります。

 
なぜ日本の男性は「もてなしベタ」なのか

 「接待の店選びは、部下である私の役目。ビールを注がされるのも私。しょっちゅう注いでないと気が利かないといわれるからもう大変。料理がでてくるのが遅いとか、味つけが塩辛いとか、お客様の前で小言をいわれたこともあります。上司が接待をする席なのに、これっておかしくないですか」

 「デートでお寿司屋さんに誘われたときは、とてもうれしかった。普段、女の子同士で行くことはないから。『なんでも好きなものを頼んで』っていわれたときは、思わず彼をハートマークで見てしまったけど、彼が最初にイカとかタコを頼んだ瞬間にがっかり。いくら好きなものを頼んでっていわれても、それじゃあ、ウニとかイクラとか高級ネタは頼めないでしょ」

 さまざまなお客様を見てきた田崎さん、接待でもデートでもスマートにふるまえる日本の男性は、欧米の男性に比べてとても少ないという。「もてなしベタ」の理由は、日本の男の子はつねにもてなされる側にいるだけでなく、お客様扱いの父親の背中を見て育ち、そんな男の子が社会人になって急に人をもてなそうとしてもできない、と語っています。

 
もてなしとは何か

 それは「ホスピタリティ」と「サービス」。たとえば、友人を自宅に招くときは、まずどんな料理をだそうかと考えるでしょう。大切なのは、その席の主役は自分ではなく、ゲストの友人だということです。友人の好みそうな料理に思いをめぐらせ、実際に作り、友人の好きなお酒を選ぶ。もし自宅に泊まる予定なら、新しいシーツや枕カバー、歯ブラシを用意する。こんな具合に精一杯、友人に尽くそうとするでしょう。もちろんお金は一切受け取らない。これが「もてなし」の原点です。別の言葉を使うと「ホスピタリティ」です。つまり、最上のもてなし=ホスピタリティは、お金を受け取らない、無償の提供物なのです。

 ホスピタリティは英語ですが、その語源はラテン語の「ホスピス」です。「ホスピス」とは、フランスやスペインの巡礼の旅路にある修道僧たちを無償で泊まらせる施設のことでした。毛布と温かい食事を提供し、旅の疲れを癒してもらうのが目的でした。ヨーロッパの「ホスピス」は、その後「ホテル」と「ホスピタル(病院)」の起源になりますが、いずれも有償の施設です。かつての「ホスピス」のように無償ではなく、ホテルや病院が「サービス」を提供する見返りに、利用者は代金を支払うというシステムが構築されました。つまり「もてなし」=「ホスピタリティ」は無償ですが、「サービス」は有償なのです。


せっかくのデートなのに

 「イタリアンに行ったときに、メニューを見るなり、『あ、僕はこのパスタでいいや。君は?』といわれ、『え?』という感じだった。前菜を食べて、パスタを食べて、メインを食べてという店なのに、注文したのはパスタ一品だけ。メインはなしです。すごく悲しかった。彼、『ファミレス育ち』の人だったのかもしれない」

 田崎真也さんの技を抜粋して以下に箇条書きにしましたが、詳しくはぜひ本書に目を通してみてください。フレンチからお寿司屋さん、中華、焼き鳥屋まで、それぞれの所作が丁寧に説明されています。

 
・下見こそ最初の気遣い
・座る位置(上席、上座など)に配慮する
・相手の好みを確認する
・まずメインディッシュを決める
・メニューは同じものを頼む
・飲めない人には炭酸水ミネラルウォーターを
・同じものを同じタイミングで食べる(これ意外と大事です)
・お酒を注ぐのも料理のとり分けも男の役割
・ホストがまず料理に手をつける
・ホストが先に美味しいとは言わない
・遠慮しすぎない
・「楽しかった」と言われるのが理想
・会計はさりげなく

 

 

接待の一流  おもてなしは技術です (光文社新書)

接待の一流 おもてなしは技術です (光文社新書)