「髪切った?」は、魔法の言葉
「髪切った?」には意味がある
いい空気を一瞬でつくる
2013年に発売された『タモリ論』(新潮社)に、タレントのタモリさんが「髪切った?」と聞くのは話すことがないからとあります。でもそこに意味があるという。実はこの言葉には「いい空気をつくる」チカラがあるのだと、人気DJの秀島史香さんはいいます。秀島さんの著書『いい空気を一瞬でつくる誰とでも会話がはずむ42の法則』でも述べています。相手との距離を一瞬にして縮める「魔法の言葉」を見てみましょう。
今日も一言も話せない
秀島史香さんが小学生のころ、父親の仕事の都合でアメリカに引っ越しました。その頃に「魔法の言葉」を覚えたといいます。弟とともに地元の学校に入学しますが、さっそく言語の壁が立ちはだかりました。
サッカーボールひとつであっという間に友だちをつくった弟と違ってクラスになかなか溶け込むことができません。日本の小学6年生は現地では中学1年生にあたり、まさに思春期1年生。また今日も一言も話せないのかと、日々、胃が痛い12歳 ...
アイ・ライク・ユア・ヘア?
それでも1ヶ月が過ぎたころ、クラスメイトの何気ない会話が耳に入ってきました。
「 I like your hair ! 」
アイ・ライク・ユア・ヘア? ライクは好き、ヘアは髪。そういえばあの子は先週と髪形が違う。そうか「あなたの髪形すてきね!」って言ってるんだ! それから意識しているとアメリカの女の子たちはとても褒め上手なことに気づいたのです。
「 I like your new shirt ! 」(あなたの新しいシャツ、いいわね!)
「 Thanks ! 」
そんなある日、ひとりのクラスメイトが私の持ち物を見てこう言いました。
「 I like your pencil case ! Cool ! 」(あなたの筆箱いいね、かっこいい!)
その筆箱は日本から持ってきた、いろいろなところが飛び出したりスライドしたりする多機能式筆箱でした。「サンキューベリーマッチ!」これをきっかけにクラスメイトと言葉を交わすことが増えていきました。
魔法の言葉
「アイ・ライク・ユア・◯◯」は、話のきっかけとしてとても便利な魔法の言葉です。この場合の「ライク」は日本語では「いいね!」というような意味。シャツや使いやすそうなペンなど、ちょっとしたことでいい、大切なのは「それ、いいですね!」の気持ちを声に出すこと。なぜならそれは「私はあなたに関心がありますよ」という意思表示だからです。
タモリの「髪切った?」を思い出そう
「正面切って人を褒めるのはちょっと ... 」というシャイな人はタモリさんのセリフを思い出しましょう。「髪切った?」、たったこれだけの言葉で「あなたに関心がありますよ」ということを示しています。たとえ「切っていません」という答えが返ってきても、さらに勢いをつけてもう一歩踏み出してみる。「そうですか、でもいつもと感じが違って見えたので。なんでかな」「私、切ろうと思っているのになかなか時間がなくて」。こんなふうに髪の話題を起点にして会話を続けていくことができます。人に会ったらまず、相手の「いいね!」を探すこと。それを口に出すこと。会話の基本は洋の東西を問わないのです。