『原稿用紙10枚を書く力』 齋藤 孝
「書く力」を身につけることで
読書力がつくだけでなく
考える訓練にもなる
書くことはスポーツだ
話すことが「歩く」ことだとすれば、書くことは「走る」ことに似ている。いきなりでも長い距離を歩くことができるように、長い時間話すことはできる。しかし、長い距離を走るとなると絶対にトレーニングが必要になる。四百字詰め原稿用紙一枚が1キロという感覚だとすると、10キロ程度ならトレーニングをこなせば、だれでも走れるようになる。1冊の本は原稿用紙300枚ぐらいでできている。10枚書ける人は長い文章を書く基礎的な力をつかみ、本を書ける可能性を手に入れたことになる。
ブログは書く訓練に適している
学生なら当然、論文やレポートなどを書かなければいけない機会も多い。社会人であれば、報告書や企画書などさまざまな形で書く力が要求される。ところで、いまでは趣味としてのブログをやっている人も多い。ブログは、ほとんどが無料なので書く訓練にはちょうどいい。記載文字数がわかるので原稿用紙何枚分とか計算しやすい。投稿記事は都合がわるければ非公開にもできる。
書けると読書力がアップする
書く力がつくと、確実に読む力もアップする。本を読むときには、どうやって書いたんだろうと想像しながら読むのが、いちばん理解が進む。逆に言えば、書く側に立ったことのある人でないと、本当は読むことはできないのだ。箱根駅伝をただ見ているだけでは「あの走り方はどうだ」とか言っていても、10キロ程度を走ったことがなければ、本当には何もわからないのと同じこと。
書く力をつける読書
「書く力」「書き言葉で話す力」をつけるためには、「読む」という行為が絶対に必要である。よい文章を書ける人は例外なく、膨大な量の本を読んでいる。これからの時代、ものをきちんと考える力がない人は非常に不利になる。
たとえば、ビジネスマンの立場も二極化されることが予想される。考える仕事、あるいはプロジェクトをつくって遂行していく能力のある人が正社員として会社の中核となり、それ以外の「代わりのきく職種」はアルバイトや派遣社員で構成されることになるだろう。
書く力とは構築力である
・書くときには公共性の意識が大切になる
・パソコンで「書く力」をつける
・思考の粘り強さも「書くこと」で身につけられる
・文章を書く動機は、人に伝えたい中身があることにある
・価値を下げる文章は書かない
・主張内容とは、書く人の「新たな気づき」である
・アウトプットを意識すると、より上質な読書ができる
・書くための読書という視点を忘れない
・まず素材としての本を選び出せることが大事
・素材とは自分にとっておもしろい、意味があると思えるもの
・レジュメは文章の設計図
・とりあえず量を書く訓練が必要
・推敲して量を縮め、人に読んでもらえるレベルにもっていく
・自分が一番言いたいことを一行目に書く
・凡庸に陥らない一文をつくりあげたい
書くための参考にしたい書籍
・バルザック『人間喜劇』
・美輪明宏『紫の履歴書』
・紀貴之『土佐日記』
・林尹夫『わがいのち月明に燃ゆ』
小説は一回書くと癖になる
お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹は、小説を書くのが楽しくてたまらないし、一回書くと絶対癖になるという。また書くことでより一層、作者の心境もわかるようになる。随筆集や自由律の俳句集も出版している、無類の本好きで知られる。