きょうも読書

言葉の迷路を彷徨う

『たそがれ清兵衛』 藤沢周平

 

藤沢周平の人柄を感じさせる
生活に密着した人情が
しみじみと心に響く 

 

たそがれ清兵衛 (新潮文庫)

たそがれ清兵衛 (新潮文庫)

 

 

 藤沢周平の短編小説『たそがれ清兵衛

 井口清兵衛は幕末の庄内、海坂藩の平侍。妻を病気で亡くし、ふたりの娘と老母の3人を養っている。生活は苦しく、下城の太鼓が鳴ると付き合いは断ってすぐ帰宅し、家事と内職に励む毎日。そんな清兵衛を同僚たちは ”たそがれ清兵衛” と陰で呼んでいた。 

 ある日、清兵衛は幼馴染の朋江と再会する。朋江は嫁いでいたが、夫の度重なる酒乱で最近離縁していた。清兵衛は朋江に思いを寄せていたが、朋江との縁談を勧められても貧しさを理由に断ってしまった。だが清兵衛はあるとき、藩命が自分に下されたことによって、ひとつの決断を下す。

 

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藤沢周平(ふじさわしゅうへい)
1927年山形県鶴岡市出身。日本の小説家。本名は小菅留治(こすげとめじ)。血液型B型。山形師範学校を卒業後、中学校の教員として国語と社会を担当するが、肺結核で休職を余儀なくされる。その後、大手術にて病気を克服し、俳誌『海坂』に投稿をはじめる。この時期に読書に励み、作家生活の素地を完成させる。

1963年に長女・展子が生まれるも同年に妻・悦子が癌により28歳で急逝。このことに強い衝撃を受け、やり場のない虚無感をなだめるために時代小説を執筆しはじめる。1972年『暗殺の年輪』で第69回直木賞を受賞。

江戸時代を舞台に庶民や下級武士の哀歓を描いた時代小説を多く残した。また農村を舞台にした小説や農業をめぐる随筆を多く発表している。長女の遠藤展子はエッセイスト。1997年、肝不全のため逝去。享年69歳。出身地の鶴岡市に「鶴岡市藤沢周平記念館」がある。代表作に『蝉しぐれ』『隠し剣孤影抄』『用心棒日月抄』など。

 

人の痛みがわかる小説

 藤沢周平の時代小説は、生活に密着した人情ものという側面が強く、どちらかというと地味な印象ですが、派手さがない分、しみじみと心に響く物語です。
 原作では、どの藩の物語であるかは書かれていないので、どの藩としても読め、普遍的なストーリーとなっています。