きょうも読書

言葉の迷路を彷徨う

『ボッコちゃん』 星 新一

 

 

ボッコちゃん (新潮文庫)

ボッコちゃん (新潮文庫)

 

 

星 新一(1926~1997年)は、日本のショートショート作家、SF作家です。父は星製薬の創業者で星薬科大学創立者星一森鴎外は母方の大伯父にあたります。

 

ショートショート

 ショートショートとは、おおむね以下の4点を満たした作品のこと。
①四百字詰め原稿用紙一枚以上、二十枚以下
②斬新なアイデア
③完全なプロット(起承転結がはっきりしている)
④意外な結末

 登場人物も極めて少なく、内容も絞られ簡潔で最後にブラックユーモアをたっぷり効かせたオチがある小話のような小説です。あたかも四コマ漫画のように分かりやすく、しかも世界中どこでも通用するような内容になっていることが大きな特徴です。

 

「おーい でてこーい」

ある日突然、村に大きな穴が現れた
誰かが「おーい、でてこーい」と叫んでみるが
何も反応が無い
学者がやってきて、穴の深さを調べてみたが
どうやら底無しらしい ...
穴にはどんどんゴミが捨てられていく
都会から村への立派な道路もでき
都会のゴミをどんどん運んだ
捨ててしまいたい物は何でも入れた
発電所からは放射能廃棄物も持ってきた
都会はきれいになり
どんどん高層ビルができていく
そして ...

 

いつかツケを払わされる

 「あの穴」は、ラストシーン以降の未来に多分繋がっているのでしょう。要するに「この穴に捨ててしまえばよい」という安易な解決策は「問題の先送り」を意味します。
 企業の不祥事の多くの原因は、経営問題の先送りや責任の回避といった、目先の解決策に走る姿勢が目立ちます。毎度、同じような不祥事が起こるのも「人は懲りない、変わらない」因果な生き物だという証かもしれません。
 ラストシーンでは、空から石が一個落ちてきます。先送りされた問題は「いつかツケを払わされる」というのが、この作品のメッセージでしょうか。

(経営者のためのリベラルアーツ入門より)