安部公房 『砂の女』
人は漫然と生きていると、自分が囲いの中にいることさえ気づかなくなってしまうのだろうか
安部公房(あべこうぼう)
1924年(大正13年)-1993年(平成5年)。日本の小説家、劇作家、演出家。本名は安部公房(あべきみふさ)。東京で生まれ、満州で少年期を過ごす。高校時代からリルケとハイデッガーに傾倒していた。東京大学医学部卒(医師国家試験は受験していない)。芥川賞受賞。代表作に『壁』『砂の女』『他人の顔』『燃えつきた地図』『など。1993年に急性心不全で死去。享年68歳。
影響を受けたもの。フランツ・カフカ、ドストエフスキー、エドガー・アラン・ポー、サルトル、リルケ、ガルシア=マルケス、ルイス・キャロルなど。
ガルシア・マルケスに衝撃
いわゆる文豪とは距離を置いていたというが、安部公房を押す作家は多い。ドナルド・キーン、大江健三郎、司馬遼太郎、三島由紀夫など。親友であるドナルド・キーンの薦めで、ガルシア・マルケスを読み、その作品に衝撃を受けたという。また大江健三郎は、安部公房を高く評価し、急死しなければノーベル文学賞を受けていただろうと言いました。
『砂の女』あらすじ
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められます。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために男を穴の中に引きとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに人間存在の象徴的姿を追求した、書下ろし長編。世界20か国語に翻訳された名作。
砂の意味
長編とはいうものの300ページもないのですぐに読めます。人間は置かれた場所に次第に順応していくものなのか。或いは、結局はどこにも辿り着けないのか。主人公は砂丘の村から逃げ出ることが可能になったにもかかわらず、あえてそこから出ようとしなくなっていた。人は漫然と生きていると、自分が囲いの中にいることさえ気づかないのだろうか。