きょうも読書

言葉の迷路を彷徨う

『言葉を育てる 米原万里対談集』

 

言葉を育てる―米原万里対談集 (ちくま文庫)

言葉を育てる―米原万里対談集 (ちくま文庫)

 

 

最初で最後の対談集

 ロシア語通訳から作家へと転身を遂げつつも、類い稀なる言葉の遣い手として人々を魅了し続けた、米原万里の最初で最後の対談集。人間に限りない興味を抱きつづけた人柄が、多彩な対話からあふれ出します。

 

対談相手

小森陽一(国文学者、東京大学教授)
林真理子(小説家、エッセイスト)
児玉清(俳優、司会者)
西木正明(小説家)
神津十月(エッセイスト)
養老孟司(解剖学者)
多田富雄(免疫学者)
辻元清美(政治家)
星野博美(写真家、作家)
田丸公美子(イタリア語通訳、エッセイスト)
糸井重里(コピーライター、エッセイスト)
解説:黒岩幸子(ロシア語通訳協会会長)

 

対談より抜粋

 各界の著名人との対談集、とにかく面白い。知的でちょっと(だいぶ)エッチ。スカトロ学術系の万里さんの話は飽きない。

米原万里 「うちのお父さん、共産党なんだ。戦争中、十六年地下に潜ってたんだ」って。「地下に潜る」って当時、隣のお屋敷に防空壕があったんですけど、そこで十六年間過ごしたんだと思ってたんですけどね。私の妹は、小学校に入学して席を決めるとき「先生、うちは共産党だから左側にしてください」って言ったんですって。運動会のときも「赤組じゃないといやだ」と駄々をこねてましたよ。
林真理子 ロシア語の通訳は少ないから、すぐ第一人者だと錯覚してくれて。英語の通訳は、どこ行っても英語がわかる人がいるから誤訳出来ないんですよ。ちょっと間違えただけで二度と雇われなくなったりするけど、ロシア語だと嘘を言ってもバレない(笑)。
米原 嘘つきは通訳のはじまり。
林 米原さん、二週間ぐらいお風呂に入らないってほんとうですか?
米原 もの書きになってからね。
林 でもシャワーは浴びるでしょ?
米原 いや、シャワーも浴びず。
林 ひぇー!
米原 歯も磨かないですよ。顔も洗わないし、髪もとかさない。猫や犬と同じです。