『ポケットに外国語を』 黒田龍之助
外国語の面白さを感じさせるエッセイ
世界に通用するために外国語を勉強しなければ! そんな気持ちを脱力させて、言葉本来の面白さを感じ取りたい。古本屋で知らない外国語のテキストを買ってみたり、時には現地にいってみたりとあちこち思考をめぐらした結果がこのエッセイに詰まっている。外国語をもっと楽しく勉強したい人へ向けたアドバイスとして読める。
黒田さんの語学エッセイはどれも面白い
肩書きは、スラヴ語学者・言語学者で英語のほか、ロシア語やウクライナ語、ベラルーシ語にも通じる言語のプロだが、著書は非常にわかりやすくて読みやすい。そしてどれも言語に対する愛情やぬくもりで溢れている。それはたぶん、絵本作家のお母様(せなけいこ)の影響があるのではないしょうか。絵本に囲まれて育ったんでしょうね。
春は外国語の季節
大学ではその専攻にかかわらず外国語を学ぶ。大学生に限らない。桜の咲く頃には外国語を新たに始めようか社会人も考える。ではどんな外国語を学んだらいいか。明確な目的があればいいが、その選択がきわめて難しい。著者は、身近な人に尋ねないで自分で選ぶのがいちばんいいという。また語学の学習法には決定版はなく、レトロな方法だが基本は読書(原書)で身につける。語学には目からの情報が欠かせない。
お薦めの書
著者のお薦めは、サマセット・モームの『人間の絆』。身体的コンプレックスを抱えた主人公フィリップの成長を追った物語だ。この『人間の絆』は「外国語学習小説」だという。主人公が外国語を学習する姿が克明に描かれる物語で、ヘッセの『車輪の下』あたりは典型で、外国語を学ぶことだけに熱心だった当時の私は、小説を読んでもそんなことばかりが気になっていたと。
黒田龍之助(くろだりゅうのすけ)
1964年東京都生まれ。上智大学外国語学部ロシア語科卒。東京大学大学院修了。東京工業大学助教授、明治大学理工学部助教授などを歴任。2008年NHKラジオ「まいにちロシア語」の講師を担当。著書は『外国語の水曜日』『羊皮紙に眠る文字たちスラヴ言語文化入門』『ロシア語のかたち』など多数。