きょうも読書

言葉の迷路を彷徨う

『未来の年表』 人口減少日本でこれから起きること

 
小さくてもキラリと輝く国を
自分たちの手で作り上げられるか

 

 

少子化は国家を根底から揺るがす「静かなる有事」

 日本の喫緊の課題を改めて整理するなら4点に分けられると。1つは、言うまでもなく出生数の減少。2つ目は高齢者の激増。3つ目は勤労世代(20〜64歳)の激減に伴う社会の支え手の不足。そして4つ目は、これらが互いに絡み合って起こる人口減少となる。日々の変化というのは極めてわずかであり、影響を感じにくいがゆえに人々を無関心にもする。しかしこれこそが、この問題の真の難しさだという。ゆっくりとではあるが、真綿で首を絞められるように「静かなる有事」は、確実に日本国民1人ひとりの暮らしを蝕んでゆく。こんな日本に、もう輝く未来はこないのでしょうか。

 

人口減少カレンダー

 日本の人口が減っていくことで、この先の日本社会がどうなっていくのかを、カレンダーのように一覧にしたのが本書の特徴です。それにしてもじわじわと進行していきます。以下に抜粋してみました。

 

未来の年表

2017年 「おばあちゃん大国」に変化
2018年 国立大学が倒産の危機へ
2019年 IT技術者が不足し始め、技術大国の地位揺らぐ
2020年 女性の2人に1人が50歳以上に
2022年 「一人暮らし社会」が本格化する
2023年 企業の人件費がピークを迎え、経営を苦しめる
2024年 3人に1人が65歳以上の「超・高齢者大国』へ
2025年 ついに東京都も人口減少へ
2027年 輸血用血液が不足する
2030年 百貨店も銀行も老人ホームも地方から消える
2035年 「未婚大国」が誕生する
2040年 自治体の半数が消滅の危機に
2050年 世界的な食料争奪戦に巻き込まれる
2065年 外国人が無人の国土を占領する ...

 

世界史においても「極めて特異な時代」

 私たちは人口が激減していくという、世界史においても”極めて特異な時代”を生きています。しかも、少子化も高齢化も歯止めがかかる見通しはなく、この極めて特異な時代はかなり長期間にわたって続きそうです。100年後も豊かな社会であり続けるためにも、なにか手立てはないのでしょうか。そこで、著者は選択肢として「戦略的に縮む」ことを提言しています。

 

「戦略的に縮む」

 時代を先取りし、” 小さくてもキラリと輝く国 ” を自分たちの手で作り上げようと提案しています。取り組むべきは、人口が少なくなっても社会が混乱に陥らず、国力が衰退しないような国家の土台を作り直すことだと。日本を救う「戦略的に縮む」ための、10の処方箋を提示。一つは、高齢者の定義を変えて数を減らしてしまおうと。次は、24時間社会からの脱却。それは「便利過ぎる社会」からの脱却ということ。三つ目は、非居住エリアの明確化。ほかには都道府県の飛び地合併など。そして最後に、公費負担分を遺産相続から徴収する「社会保障費循環制度」を提言しています。これらの処方箋が、すべてを解決してくれるわけではないでしょうが、かといって大胆な政策を打たずして起死回生などありそうもないのです。