「ほめる」は魔法のくすり 外山滋比古
驚異のピグマリオン効果
願えばかなう
知的文章術~誰も教えてくれない心をつかむ書き方 (だいわ文庫 E 289-5)
- 作者: 外山滋比古
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2017/08/10
- メディア: 文庫
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ほめると目に見えて上達する
学校でひとクラスをAB2つのグループに分ける。テストをしてAグループにはめいめい採点した答案を返す。Bグループの答案は見ないでおく。
そして、Bグループの生徒をひとりひとり先生が呼んで、
「この間のテストはよくできていた」
とほめる。みんなに同じことを言う。しばらくしてまたテストをする。やはり、採点した答案を返すのは、Aグループだけ。Bグループには全員に
「こんどもよくできた」
と言う。こういうことを2、3回繰り返したあとでテストをし、ABともに採点をしてABそれぞれの平均点を出すとBグループの方が成績がいい。
これをピグマリオン効果と言う。ほめていると実際にそのようになる。
Bのグループはできたからほめられたのではなく、でたらめにほめられたのだが、それでもきく。実際によくできるようになるのだから不思議である。ほめられるということは上達や能力の成長に、たいへん大きな作用を及ぼす。
ピグマリオンとは願えばかなうこと
ピグマリオンはギリシャ神話でキプロスの王様。彫刻の名手だった。あるとき理想の女性を象牙で刻んだが、あまりのみごとなできばえに彫像を深く愛するようになった。神にこの彫刻に生命を与えて、結婚させてくださいと願った。哀れと思った愛の女神さまアフロディテは彫刻を生きた女人にし、ピグマリオンは彼女と結婚したというのである。
そこから、願えばかなうことをピグマリオン効果と言うようになった。新しいことや難しいことを始めるときに、やかましい注意ばかりしていてはうまくいかない。多少、足りないところはあっても、どこかいいところを見つけて、ほめてくれる人がいると、目に見えて上達する。
自分で自分をほめればいい
もし、ほめてくれる人がなく、注目したり指導してくれる人がなかったら、自分で自分をほめればいい。上手に書けなくても、前に比べたらだいぶよくなっているのなら、
「かなり進歩してきた。もっとうまくなりたい」
そう思っていると、そのうちにだんだん本当に進歩している。もっとも、いい気になって、拙いものに自己満足していては話にならない。自分に対してはあくまできびしく謙虚でなくてはならない。
それには、つねに他人のすぐれた文章に触れて、文章に対する目を養っておく必要がある。自己批評がしっかりしていれば、文章も上達する。そして平凡なようだが、とにかく書いてみる。そして上手になりたいと願いながら、努力を続けることである。そうすればいつのまにかうまくいくようになる。ピグマリオン効果はたんなる空頼みではない。