『手から、手へ』 「一万円選書」に選ばれた感動の一冊
NHK『プロフェッショナル仕事の流儀』での、いわた書店『一万円選書』に選ばれた一冊
『手から、手へ』
詩 池井昌樹
写真 植田正治
企画構成 山本純司
「やさしい子らよ」と
父母の間にくりかえされる
永遠のものがたり
ことばと写真の奇跡の出会い
(本書帯より)
不幸な生をあゆむだろう
ページ冒頭から、いきなりこうはじまる
おまえたちは
やさしい子だから
おまえたちは
不幸な生をあゆむだろう
そしてこう続く
石ころだらけな
けわしい道をあゆむだろう
どんなにやさしいちちははも
おまえたちとは一緒にいけない
やがてはかえってしまうのだから
たすけてやれない
やがて瞳の凍りつく日がおとずれても
いまはにおやかなその頬が痩け
その澄んだ瞳の凍りつく日がおとずれても
怯んではならぬ
憎んではならぬ
悔いてはならぬ
本書は冊子のように薄い。しかし、重みのある一冊に。それは、親が子に向けた、これから来るであろう人生の厳しさに愛をもって答えている。そして、絵本という体裁を、植田正治のモノクロ写真が彩っているのです。
「いわた書店」に 3,000人もの注文
先日、NHK「プロフェッショナル仕事の流儀』で取り上げられた、北海道砂川市にある「いわた書店」。一見、普通の小さな本屋さんのようだが ... あるサービスが人気で全国から注文が殺到しているという。それは1万円選書という1万円分のおすすめの本を送るサービスなのです。
利用者に最近読んだ本と評価を聞き、職業やよく読む雑誌などの簡単なアンケートに答えてもらう。そのアンケートをもとに読めば楽しんでもらえる本を推測して1万円分のおすすめの本を送ってもらえる。のちにこのサービスを利用したい人が続出した。
面白そうな本を見繕って送ってくれよ
始まりは10年前、高校同窓会の先輩の前で書店業界の厳しい状況を話した時のことです。「それじゃあ面白そうな本を見繕って送ってくれよ」と数人の先輩から1万円を渡された。
病院長、裁判長、社長といった面々でした。緊張し、なぜこの本を薦めるのか、手紙を添えて送りました。高裁判事だった先輩には、「百年以上前の日本に来た外国人が何を感じたのか ... 今後の百年に何を残すべきかのヒントがあります」と渡辺京二の『逝きし世の面影』を強く薦めた記憶があります。