きょうも読書

言葉の迷路を彷徨う

学歴より大切なもの

 

新たな階級社会となりつつある
今の日本社会をどう生きるべきか

学歴より大切なものを
日本史から学ぶ

 

 

*本書『ニュースの”なぜ”は日本史に学べ』から、あくまでも備忘録用として要約しています

 

 

日本は階級社会なのか

 日本は弥生時代以降、明治維新までずっと階級社会の国だった。縄文時代までは、ほぼ貧富の差は存在しない。弥生時代になると稲作が入ってきて余剰生産物が生まれる。定住することで土地や水、青銅器、鉄器などが「資産」として価値をもつようになった。資産という発想が生まれたことによって、貧富の差が固定され、階級社会になっていった。階級社会が解消されたのは明治時代のこと。人々は華族・士族・平民という違いはあっても基本的には平等になる。

 

学歴が重視されるようになる

 しかし、現実的にすべての人が平等ということはあり得ない。階級に代わり、人を判断する新しい基準が生まれていく。それが藩閥、②軍閥、③学閥の3つだ。1894年から始まった高級官僚の採用試験である現在の「国家公務員採用総合職試験」により学閥(学歴)が重視されるようになっていく。東大や京大などの旧帝国大学卒業者のブランドが価値を持つ時代になった。

 

なぜ福沢諭吉は『学問のすゝめ』を書いたのか

 藩閥軍閥、学閥、これらは一見、新しい階級のような印象を受けるが、これらは従来の封建的な階級社会を打破するためのものだった。本来、学歴は平等を実現するためのもの。出自に関係なく、頑張って勉強することによってチャンスをつかむことができる。福沢諭吉はそのことを誰よりも理解したうえで、『学問のすゝめ』を執筆した。その中で「門閥制度は親の敵(かたき)でござる」という言葉を残している。「志を立て、苦学して学問を身に付けることにより、世に出ることができる」と、当時の若者に爆発的に読まれた。

 

「機会の平等」が失われている

 藩閥軍閥と学閥の3つによって、旧来の封建的な階級社会は打破されたが、現代ではすでに藩閥軍閥は存在しない。じつは、現在も平等を求められる装置として機能しているのは、学歴(学閥)だけだ。ところが、その学歴を得るために必要な教育を受けるには、親の経済力がモノを言うようになっている。お金がないと塾に通えない、優秀な学校に入れない、という世の中に。つまり、スタートラインが平等ではない。「機会の平等」が失われている状態である。

 

 新たな階級社会の誕生

 高度な教育を受けた子どもは高学歴(大卒や院卒)、高学校歴(旧帝大早慶)を手に入れてお金を稼ぐことができ、さらにその経済力は、親から子どもへと引き継がれていく。「格差が固定されていくこと」が階級社会の定義だとすれば、今はまさに新しい階級社会ができあがりつつある。
 では、新たな階級社会となりつつある今の日本社会を、どう生きるべきか。これは現代日本における最大の課題だ。

 

現代の「新・階級社会」をどう生きるか

 本書では次の二つのことが重要だという。ひとつは、自分に適した仕事を見つけて、頑張って働くこと。経済力と教育力による格差が存在していても法的に定められた身分ではない。江戸時代以前のように、努力しても上のポジションを得られないという本物の階級社会とは違う。
 もうひとつは、「学歴は ”武器” にはならない」と知ること。いまだに学歴がモノをいう社会であるのは事実だが、一方でバブル時代のように東大・京大や一橋、早慶を出ればそれだけで食べていけるという時代でもない。「いい大学を出てもダメなやつはダメ」という時代に。そういう意味で、もはや学歴は「武器」とはいえない。「防具」という表現のほうが正しい。

 

では何が武器になるのか

 それでは、いったい何が学歴よりも大切になるのか。それは教養だという。歴史や政治経済、古典などを含めて、いかに社会のことを知っているか。グローバルで柔軟な思考ができるか。そして最後に、英語や中国語などの語学力が、人生の可能性を広げてくれる。語学は文化・教養でもあり、これを学ぶことで他者の理解につながる。学歴は「防具」、教養は「武器」、語学は「翼」だと。

 

歴史を学ぶ意義とは

 歴史を学ぶ意義は、大きく3つある。まず、今、ここの価値観が絶対のものではない、と知るためである。時代が変われば、国や地域が変われば常識は変わる。それが痛感できる。次に、どんな人でも人生は一度きり、と知るため。歴史に名を残す人たちも農民も、武将も、労働者も、それぞれ一人分しか人生を生きていない。そして最後に、「人は必ず間違う」と知るため。見栄や勘違いから戦いを始めてしまったり、優先順位を誤り暮らしが成り立たなくなったり。いろんな時代、いろんな場所で、いろんな人がいろんな間違いをして、それでも生きてきた。そのことだけでも知ってほしいと。

 

 

 

本書『ニュースの”なぜ”は日本史に学べ』では、日本人が知らない76の疑問に答えています。以下はその一部です

・なぜ江戸は世界一の都市になれたか
・なぜ薩摩藩は幕府を倒せたのか
・日本が戦争に突き進んだ本当の理由とは
・なぜ武家政権天皇を倒さなかったか
・なぜGHQ天皇制を維持したか

・なぜ安倍首相は憲法改正にこだわるか
憲法改正は実現するか
・日本に戦争の危機は訪れるか
・なぜ日本と朝鮮半島はこれほど仲が悪いのか
・中国や朝鮮半島が強気なのはなぜか

・なぜ日本はアメリカに従属したままなのか
・なぜ日本は第二次世界大戦へと向かったか
・なぜ「少子化」が進んだのか
・日本人が外国人を受け入れたくないは本当か
・なぜ格差が起きるか

・なぜ急速に離婚が増えたか
・なぜ日本人は自己主張しないのか
・なぜ日本人は無宗教なのか
・いじめ問題をなくすにはどうすべきか
・歴史を学ぶ3つの大事な意味

など

 

 

 

 

 

 

 

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