『銀河鉄道の夜』 宮沢賢治 それは哲学

 

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宮沢賢治童話の代表作

銀河鉄道の夜』は、宮沢賢治の童話作品。孤独な少年ジョバンニが、友人カムパネルラと銀河鉄道の旅をする物語で、代表作のひとつです。

 

銀河鉄道の夜』の最終形と初期形

 宮沢賢治は死後、その代表作となる『銀河鉄道の夜』に、度重なる推敲を重ね、4つの形の原稿を遺しました。研究者の綿密な調査の結果、推敲が最も後のものと思われるものを最終形とし、その前のものを[初期形]と呼びます。この初期形の第三次稿には、そのおしまいにブルカニロ博士なる人物が登場しています。
 賢治の死によって推敲は止まり、夥しい数の原稿のまま遺されたその作品群は、いまもなお多くの謎と魅力にみちています。

 

主な登場人物

・ジョバンニ
 主人公の少年。貧しい家庭に育ち、母は病に臥せっている。家計を支えるため、学校に通いながら働く、健康かつ孤独な少年。父親は長らく家を不在にしている。

・カムパネルラ
 ジョバンニと同じ学校のクラスメイト。ジョバンニとは反対の裕福な家庭に育つ。ジョバンニが家庭環境のことで同級生にからかわれるのを気にしつつも気の毒に思い、見ているしかできない。

・ザネリ
 ジョバンニとカムパネルラの同級生。ジョバンニの父親の悪い噂を持ちだして、ジョバンニをからかっている。

・ブルカロニ博士
 初稿から第3次稿まで登場したが、第4次稿では全てのシーンがカットされた。銀河鉄道内では、どこからともなく声が聞こえるか、乗客として現れる。ジョバンニにものの見方や考え方などを指し示す。

 

銀河鉄道の夜』のあらすじ

 父親のことで同級生たちにからかわれている孤独な少年ジョバンニは、ある夜ひとりで星空を眺めていました。すると「銀河ステーション」というアナウンスとともに、まぶしい光に包まれ、気が付くとカムパネルラとともに銀河鉄道に乗り込んでいたのでした。二人は銀河鉄道に乗って、星を巡る旅を楽しみ、そこでさまざまな考えや生き方をする人々に出会います。

 旅の終わり、二人は旅の途中で聞いた「本当の幸い」のために一緒に歩んでいこうと誓うのですが、カムパネルラは意味深な台詞を残して、いつの間にか姿を消してしまいます。夢から覚め、ひとり草むらで目を覚ましたジョバンニが、町へ向かうとカムパネルラが川に落ちたザネリを助けようとして溺れてしまい、行方不明になったことを知ります。そしてその瞬間、カムパネルラの言葉が何を意味していたのかを悟るのです。自分は死んでしまったけれど、友を救うという良いことをした。だからきっと僕が死んでしまってもお母さんは許してくれるだろう ...

 カムパネルラの父親はジョバンニに、ジョバンニの父がもうすぐ帰ってくるという手紙が来たことを告げる。ジョバンニが、父からの知らせを持って母のもとへ帰るところで物語は終わります。

 

哲学的な生きる意味を示唆

 孤独で世界に居場所のない少年ジョバンニが、銀河鉄道の旅を通して、みんなの幸せのために尽くすことが生きる意味であると悟るまでを書いた、哲学的なストーリーです。一緒に旅をするカムパネルラは、自らの命を犠牲にして友人を救いました。この姿が、ジョバンニに生きる意味を気付かせるきっかけになります。
 さらに、ジョバンニにとって大きな孤独の原因であった父親が帰ってくるという知らせを受け、物語序盤では世の中に居場所のなかったジョバンニが物語の最後では、生きる意味と自分の居場所を取り戻して、自分の家へと帰る姿が描かれています。