北朝鮮の受難と生きる道

 

国家の行動原理は生き残りである
隣国同士は対立する
敵の敵は味方

 

 長引く拉致被害者問題、核開発も止めない、そして敵対行為ばかりの北朝鮮。まったく理解できない国だが、朝鮮半島情勢も地政学を学べばさまざまなことが見えてくる。

 

マンガでわかる地政学 (池田書店のマンガでわかるシリーズ)

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地政学を読み解く用語

チョークポイント
「チョーク」は「首を絞める」という意味。そこを封鎖されると貿易がストップしてしまうような海峡や運河のこと。
 例えば、石油タンカーが中国や日本に向かう場合、マラッカ海峡が最短ルートになるが、このポイントを特定の国が封鎖すると他国への石油供給を止めることができる。別ルートで遠回りをすれば価格競争に負けてしまう。

パクスアメリカーナ
 パクスとは、古代ローマ帝国が周辺国を威圧して平和を維持していたこと。パクスは「平和」という意味で、「力による平和」といえる。パクスアメリカーナは「世界の警察官」か。一極支配状態は、圧倒的な軍事力で他国を威圧して実現する。その力が紛争発生の抑止力となって国際秩序は安定する。

シーパワー
 海上交通路を自由に支配できるイギリスのような海洋国家のことを、「シーパワー」と呼ぶ。シーパワーは島国、海洋国家で海上貿易に依存し、海軍中心の国家をいう。大西洋にも太平洋にも面しているアメリカは、地理的には大陸でも地政学ではシーパワーとしてとらえられている。
  アメリカ海軍の軍人で軍事史の専門家であった、アルフレッドマハンは、アメリカを「巨大な島」と考えた。ヨーロッパから遠く離れたアメリカに攻め込む国はないと。ただ、現在のアメリカはもう衰退がはじまっている。「パクス」が崩れれば世界は再び無法地帯になる可能性もある。

ランドパワー
 ロシアや中国のような海への出口が少ない内陸国家を「ランドパワー」と呼ぶ。大陸国家で陸続きの国境があるため、必然的に陸軍が強化され、陸軍主体になった国だ。ランドパワーは広大な国土そのものが周辺諸国に対する防波堤になる一方、余力のあるときは海への出口を求めて膨張する。

 

他国の侵略にさらされ続けた朝鮮半島

 朝鮮半島ランドパワーの侵攻にさらされ続けてきた。中国だけでなく、北方騎馬民族も攻めてきた。紀元前2世紀からは、朝鮮半島北部は「楽浪郡」と名付けられ、漢王朝に占領され、13世紀には北方騎馬民族のモンゴルが中国を攻め取り、朝鮮半島にも侵攻して全土を占領した。襲来時に20万人が奴隷として連行された。それ以外の時代にも朝鮮の歴代王朝は中華帝国に従属してきた。
 近代にはロシア帝国も加わる。南からはシーパワーの倭寇の襲来や秀吉の出兵を受け、近代には欧米列強に圧迫され、1910年日本に併合された。第二次世界大戦後は、ソ連アメリカによって南北に分断され、今日に至る。

 

生き残り策としての核開発

 歴史上何度も侵攻してきた中国を金日成は警戒していた。北朝鮮は、中ソ対立を利用して核兵器を開発した。「付け根」という地政学的な弱点を持つ朝鮮半島は、常にランドパワーの脅威に晒されている。韓国側にはアメリカ軍の支援(核兵器搭載可能な戦闘機を含む)があるため、軍事的に劣勢な北朝鮮は核保有に踏み切った。 

 

南北統一は至難の業

 北朝鮮と韓国は、異なる政治体制を隔てるバッファーゾーン(緩衝地帯)となっている。日本やアメリカから見れば韓国があるおかげで、北朝鮮や中国、ロシアという、政治・経済・イデオロギーが異なる国々と直面せずにすんでいる。逆もまたしかりで、中国・ロシアは北朝鮮の存在によって、韓国という親米国家と国境を接さずにすむ。韓国にとっても北朝鮮は、有史以来の脅威・中国に対する貴重なバッファーゾーンだ。
 韓国は地政学的に「島」と言えるような状態となり、ランドパワーからの脅威が減じている。周辺諸国が「必要」としている限り、北朝鮮は滅びない。
 このように、分断された国や民族を再統一することは、より多くの恩恵を周辺国に与えることがない限り難しく、至難の業なのだ。
 東西ドイツの統一は、ソ連民主化と東欧共産圏諸国の崩壊によって可能になった。しかし、南北朝鮮の統一を望む周辺国はない。これが現実だ。