『お金の流れでわかる世界の歴史』
現代は「フランス革命前夜」に酷似
1990年代から始まった世界のマネーゲームブームは、実はソ連の崩壊が大きく影響している。ソ連や共産主義陣営が健在だったとき、西陣営は資本主義の暴走に、それなりに気を配っていた。
19世紀から20世紀初頭にかけて、資本主義経済が過熱し、貧富の格差が拡大した。それが、共産主義の台頭を招くことになった。だから西側陣営は、資本主義経済を採りつつも、企業が自由気ままに拝金主義に走らないよう、貧富の格差が生じないような配慮をし続けていたのである。しかし、ソ連の崩壊により、西側陣営の自重が薄れたのだ。「資本主義こそが正しい経済思想」とばかりに、企業や投資家に限りなく自由を与え、便宜を図る政策を採り始めたのだ。たとえば、ソ連が崩壊する前までは、西側諸国は「相続税」や「所得税の累進課税」などで、富裕層からしっかり税金を取っていた。しかし、ソ連が崩壊した後は、相続税は相次いで縮小、廃止され、所得税の累進性も弱められた。日本では、富裕層の所得税率は1990年代以降、50%以上も下げられ、相続税は30%以上も下げられた。アメリカの相続税も90年代以降、一貫して下げられ、ブッシュ政権により一旦、廃止の決定も行われた。(オバマ政権により復活)
そして各国は投資に対する減税を行い、投資を促進させようとした。その結果、90年代後半から現在まで、世界中で投資ブームが起き、マネーゲームが加速していったのである。それが、リーマンショックを引き起こしたとも言えるのだ。
マネーゲームは、リーマンショックで一旦、自重的になったものの、すぐにぶり返した。現在も、世界中で投資家は優遇され、マネーゲームが推奨されている。その結果、世界的に貧富の格差が拡大している。国際支援団体オックスファムの発表によると、2015年現在、世界の富の半分は、1%の富裕層が握っているという。この1%の富裕層のシェアは、2009年時点では44%だったので、年々拡大している。この状態はフランス革命前のフランス社会に似ているといえる。このまま世界のマネーゲーム化、貧富の差の拡大が続けば世界規模でのフランス革命が起きないとも限らない。
(本書より抜粋)
そのほかに
・国家の盛衰には「パターン」がある
・「少ない税金」が自由な経済活動をつくる
・紀元200年の「ハイパーインフレ」
・ユダヤ人が世界経済・文化の中心にいた理由
・中国を「金融先進国」にした世界初の紙幣
・オスマントルコという経済大国
・「経済後進国」だった中世までのヨーロッパ
・大航海時代の主役スペインの台頭
・ローマ教皇令「スペインとポルトガルで世界を征服せよ」
・黒人奴隷のほとんどは黒人によって売られた
・無敵艦隊は「消費税」によって沈められた
・イギリスがローマ教会から離脱した「金銭的理由」
・海賊の「スポンサー」としてのエリザベス女王
・国王の「デフォルト」が招いたフランス革命
・ナポレオンは「資金不足」で敗北した
・イギリス商人たちの狡猾な植民地政策
・アメリカでコーヒーが飲まれるようになった理由
・ウォール街をつくったユダヤ人たち
・世界大恐慌はドイツから始まった
・なぜヒトラーは「ノーベル平和賞候補になった」のか
・ポーランド侵攻の真実
・アメリカ史上最大の「倒産」
・どうして世界は「マネーゲーム化」したのか など
お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力・・・・・・はこう「動いた」
- 作者: 大村大次郎
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2015/12/11
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