きょうも読書

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『日本の名著』 この50冊の名著を読む理由

 

私たちは近代の思想遺産、少なくともこれらの50の名著は活用せねばならぬはずである

 

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日本の名著―近代の思想 (中公新書)

日本の名著―近代の思想 (中公新書)

 

 

『日本の名著』  近代の思想(改版)桑原武夫

 人間は虚無から創造することはできない。未来への情熱がいかに烈しくても、現在に生きている過去をふまえずに、未来へ出発することはできない。
 私たちは、明治維新から1945年までの日本人の思想的苦闘の跡をどれだけ知っているであろうか。日本の未来を真剣に構築しようとするとき、私たちは近代の思想遺産 ― 少なくともこれらの50の名著は活用せねばならぬはずである。
 私たちは近代国民としての自信をもって、過去に不可避的であった錯誤の償いにあたるべき時期にきている。(本書より)

 

すぐれた作品がきわめて多い

 『日本の名著』というタイトルで、明治維新から1945年までのすぐれた本を選びだしており、それぞれに解説がついている。この95年間にはすぐれた作品がきわめて多いという。文学上の創作は除き、そこで対象を哲学、政治・経済・社会、歴史、文学論、科学にかぎり、「近代の思想」という副題をつけている。夏目漱石など文学者は、評論から選び、創作は除いてある。
 ここでは、その50の本のタイトルを挙げておきます。各著者の紹介文を読んでいるだけでも人生の縮図をみているようで面白く、当然その著書にも興味がわいてきます。

 

福沢諭吉 『学問のすゝめ』
田口卯吉 『日本開化小史』
中江兆民 『三酔人経綸問答』
北村透谷 『徳川氏時代の平民的理想』
山路愛山 『明治文学史
内村鑑三 『余はいかにしてキリスト信徒となりしか』
志賀重昂 『日本風景論』
陸奥宗光 『蹇蹇録(けんけんろく)
竹越与三郎『二千五百年史』
幸徳秋水 『廿世紀之怪物帝国主義

宮崎滔天 『三十三年之夢』
岡倉天心 『東洋の理想』
河口慧海 西蔵チベット旅行記
福田英子 『妾(わらわ)の半生涯』
北一輝  国体論及び純正社会主義
夏目漱石 『文学論』
石川啄木 時代閉塞の現状
西田幾多郎善の研究
南方熊楠 『十二支考』
津田左右吉『文学に現はれたる国民思想の研究』

原勝郎  『東山時代に於ける一縉紳(しんしん)の生活』
河上肇  『貧乏物語』
長谷川如是閑『現代国語批判』
左右田喜一郎『文化価値と極限概念』
美濃部達吉憲法撮要』
大杉栄  『自叙伝』
内藤虎次郎『日本文化史研究』
狩野亨吉 『狩野亨吉遺文集』
中野重治 『芸術に関する走り書的覚え書』
折口信夫 『古代研究』

九鬼周造 『「いき」の構造』
中井正一 『美と集団の論理』
野呂栄太郎『日本資本主義発達史』
羽仁五郎 『東洋における資本主義の形成』
戸坂潤  『日本イデオロギー論』
山田盛太郎『日本資本主義分析』
小林秀雄 私小説論』
和辻哲郎 『風土』
タカクラ = テル『新文学論』
尾高朝雄 『国家構造論』

矢内原忠雄帝国主義下の台湾』
大塚久雄 『近代欧州経済史序説』
波多野精一『時と永遠』
小倉金之助『日本の数学』
今西錦司 『生物の世界』
坂口安吾 『日本文化私観』
湯川秀樹 『目に見えないもの』
鈴木大拙 『日本的霊性
柳田国男 『先祖の話』
丸山眞男 『日本政治思想史研究』

 

総勢15名での選定と分担執筆

 上記の書目選定や解説については、桑原武夫をはじめ親しい友人など、以下15名の分担執筆によるもの。なお、本書執筆は1962年頃であり、選ばれた50の本のうち入手困難なものもあると想像できる。機会があれば古本屋をめぐり、探しだすのも楽しい作業になるかもしれない。

飛鳥井雅道 京都大学人文科学研究所
飯沼二郎  京都大学人文科学研究所
井上 健  京都大学理学部
上山春平  京都大学人文科学研究所
梅原 猛  立命館大学文学部
加藤秀俊  京都大学人文科学研究所
川喜田二郎 東京工業大学理工学部
河野健二  京都大学教養部
桑原武夫  京都大学人文科学研究所
高橋和己  立命館大学文学部
多田道太郎 京都大学人文科学研究所
橋本峰雄  神戸大学文学部
樋口謹一  京都大学人文科学研究所
平山敏治郎 大阪市立大学文学部
松田道雄  医学博士

以上、共同執筆者(五十音順 所属は執筆時)

 

 
桑原武夫著『文学入門』