きょうも読書

言葉の迷路を彷徨う

偉くない「私」が一番自由 米原万里

 

偉くない「私」が一番自由 (文春文庫)
 

 

 

佐藤優が選んだ傑作選

 ロシア語会議通訳、作家・エッセイストとして活躍した米原万里の作品を、盟友・佐藤優がよりぬいた傑作選。メインディッシュは、初公開の東京外国語大学卒業論文「詩人ネクラーソフの生涯」。ロシア、食、言葉をめぐるエッセイです。

 

単位をあげるから授業に出ないでくれ

 東京外国語大学での著者の貴重な卒業論文が、約100ページにわたって掲載されています。外語大を受けたのは、ロシア語で受験できたから。入学後に教授に呼ばれ、「単位はあげるから、頼むからロシア語の授業には出ないでくれ、やりにくいから」といわれた。そこで、イタリア語を聴講させてもらう許可をとったが当時、ゲバ棒を持った「イタリア科を明るくする会」の部隊に、授業をことごとく潰される。授業がないおかげで素晴らしく豊かな時間に恵まれる。受験勉強の丸暗記地獄から解放された直後だったから余計にそう感じられた。その時間を大量の読書に注ぎ込むことができ、読めば読むほど読みたいものが増えて、読む速度も早くなっていった。

 

東大大学院へ

 また、言語学に関する書物を片っ端から図書館で借りて読みあさった。言語って空気みたいなものなのに、人間社会を根底から支えているものだから。そして、ネクラーソフという詩人のすごさに衝撃を受ける。文学の勉強をもう少し続けたくて東大大学院に入り、修士課程を修了した後、1978年頃、てっとり早く口に糊する(ご飯を食べる)ために通訳を引き受けるようになった。

 

米原万里のジャンル別文庫ベスト5

17歳の少年少女に読ませたい文庫5
・「夜間飛行」サン=テグジュペリ
・「罪と罰ドストエフスキー
・「人間悟性論」ジョン・ロック
・「石の花」坂口尚
・「月なきみそらの天坊一座」井上ひさし

無人島に持って行きたい文庫5
・「種の起源ダーウィン
・「和漢三才図会」
・「ムツゴロウの自然を食べる」畑正憲
・「新訂新訓 万葉集佐佐木信綱
・「忍者無芸帖」いしいひさいち

21世紀に残したい文庫5
・「資本論カール・マルクス
・「ドストエフスキー詩学ミハイル・バフチン
・「何とも知れない未来に」大江健三郎
・「黒い画集」松本清張
・「火の鳥手塚治虫