きょうも読書

言葉の迷路を彷徨う

帝国主義諸国の植民地政策 小室直樹

 

獣なみの欧米帝国主義国家
ジェノサイドで世界征服を目ろむ

 

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イギリスの帝国主義など

 

帝国主義の全盛

 ナポレオン戦争以後、ヨーロッパ内の戦争と革命、産業革命の完成にともなう経済の再編など、しばらく国内問題に忙殺されていたヨーロッパ列強も、1878年ベルリン会議のころから帝国主義の全盛期になっていく。彼らは全世界を呑噬(どんぜい / のみこむ)せんと、植民地獲得のために征服の進軍を開始した。

 

侵略は国家の存在証明

 当時のヨーロッパは、帝国主義にあらずんば国にあらずといわんばかりの勢いであった。それまでは帝国主義といえば、英仏の専売特許。帝国主義的侵略はヨーロッパでは、国家の存在証明みたいなもの。老舗の帝国主義国たる英仏露に加えて、より強力となったドイツ帝国帝国主義レースに参加してくる。とはいっても、世界中のめぼしいところは、みんな英仏のような先進帝国主義諸国が占領してしまっている。

 

力は正義なり

 19世紀末、20世紀初頭のイギリスときたら、切取り強盗、居直り強盗もいいところ。南アフリカボーア人の国に金とダイヤモンドがごっそり出ることがわかると、さっそく攻め込んだ。ボーア人の国は武名を馳せた民族であっても、結局イギリスの版図となった。
 英仏露をはじめ、帝国主義国は力の信奉者である。「力は正義なり」を地でゆくのだ。ボーア人のように勇敢に闘うか、アルゼンチンのようにイギリスを先生とあがめて、その指導のもと南米一の大海軍国にでもなれば少しはましに取り扱ってくれる。これに反し、まともな武力がないとなると、これは奴隷も同様。いったん、帝国主義国家の植民地になったら最後、万事休すであった。

 

織物産業を梃にしたイギリス経済

 イギリス経済をして世界に冠たるものとならしめたのは、マンチェスター、ランカスターなどの織物産業である。織物産業を梃(てこ)にしてイギリス経済は、スペインを追い落とし、オランダを追い落とし、次々に先進諸国を撃破してヨーロッパを征服した。
 

帝国主義国のやり口

 イギリスの織物産業は、産業革命をもってしてもダッカベンガル織物にはかなわなかった。しかし、このままでは世界征服ができない、となるとイギリスはダッカの織工を集めて手を切り落とす。これが、帝国主義のやり口だ。イギリスは民族殲滅の名人なのだ。ヒトラーユダヤ人を鏖し(皆殺し)にしようとしたが果たせなかった。ところがイギリスは、タスマニア人を本当に鏖しにしてしまった。
*民族殲滅(みんぞくせんめつ)とはジェノサイドのこと。皆殺し、大量殺害を意味し、残らず滅ぼすこと。

 

猛獣狩りにされたタスマニア

 ではイギリスはなぜ、タスマニア人を鏖し(皆殺し)にしたのか。タスマニア人は原始人に近い人びとで、イギリス人と戦う力もなければ意図もない。だから少しの抵抗もなかった。タスマニア人がイギリス人に鏖しにされたほんとうのわけは、オーストラリアに猛獣がいなかったからである。猛獣狩りはイギリス人のお家芸。殺生が滅法に好きで本国では、貴族は狐狩りをたのしむ。
 オーストラリアに漂着したイギリス人。猛獣がいないので退屈で仕方がない。タスマニア島を見ると、原始人が住んでいた。タスマニア人はアメリカのバッファローなみのあつかいで、絶滅してしまった。このようなことはイギリスだけでなく、その他の帝国主義諸国だって、やることといえば、どれも似たもの。

 

ハワイを奪い女王を島流し

 19世紀も末になると、英仏露といったベテラン帝国主義諸国に加えて、ドイツ、アメリカはじめ、めぼしい欧米諸国は続々と帝国主義レースに参加してきた。
 アメリカは、モンロー主義をかなぐりすてて、門戸開放主義を標榜するようになった。「門戸開放」とは、てっとり早くいえば、なるべく外国を侵略しましょうということだ。たとえば、ハワイはカメハメハ王朝下の独立国であったが、アメリカはハワイを植民地にして、女王を島流しにした。また、フィリピンをスペインから奪った。
モンロー主義とは、アメリカと欧州間の相互不干渉を提唱した外交政策

 

 奴隷牧場で大金持ちになった資本家

 だが、アメリカはフィリピンやハワイであまり残酷なことはしなかった。それというのも米大陸で、残酷なことはしつくしてきたからである。アメリカがインディアンに対してどういうことをしたか。これはよく知られている。しかし、アメリカ帝国主義の残酷物語で白眉というべきは、奴隷牧場であろう。
 アメリカは、はじめのうちこそ黒人奴隷をアフリカから輸入していたが、国内生産を思いたった。奴隷のなかでも、商品として一番高く売れるのが白人との混血児である。そこで資本家は黒人の女性をたくさん集めてくる。そして健康で知能のほうもある程度の白人の男を雇う。この男は奴隷ではなく、れっきとした労働者である。種つけ工ということだ。かくして生まれた子どもは奴隷として高く売れる。こうして奴隷商人いや、奴隷牧場主として大金持ちになった資本家はずいぶんといた。

 

獣なみの欧米帝国主義国家

 欧米帝国主義国家は、大国にかぎられてはいなかった。イタリアはいうまでもなく、ベルギーのような小国ですら、帝国主義レースに参加してきた。老いたりとはいえオランダも依然として帝国主義国家としての地位を保全していた。
 大国といわず小国といわず、宗主国の市民が植民地の人びとに対する態度ときたら、まるで人間ではなく、獣なみであった。

 

 

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中国を分け取りにする帝国主義列強の風刺画
(左から英・独・露・仏・日本)

 

 

 

* 上記の記事は『韓国の悲劇』からの抜粋です

韓国の悲劇―誰も書かなかった真実 (カッパ・ビジネス)

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