三島由紀夫『豊饒の海』初の舞台化
又、会ふぜ。きつと会ふ。
4冊からなる大河小説を一舞台作品として創作する史上初の試み。三島由紀夫の「美」の象徴とも言うべき松枝清顕に、東出昌広が出演。
「又、会ふぜ。きつと会ふ。」という言葉を残し、20歳で生命を落とした男、松枝清顕。
彼を生涯追い求める男、本多繁邦。
そして本多の前に清顕の生まれ変わりとして登場する人々。
存在とは、世界とは、美とは、
そして「私」とは ...
公演日程 2018年11月3日~12月2日
開場 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
原作 三島由紀夫
「豊饒の海」(第1部~第4部)
脚本 長田育恵
演出 マックス・ウェブスター
出演 東出昌大 宮沢氷魚 上杉柊平 大鶴佐助
神野三鈴 初音映莉子 大西多摩恵 篠塚勝
宇井晴雄 王下貴司 斉藤悠 田中美甫
首藤康之 笈田ヨシ
三島の生涯をかけた遺作
このうえもなく美しく優雅な悲しみに満ちた壮大な物語は、全4部作で1700ページを超える。ルビはあるものの漢字や比喩も多く、敬遠されがちだが読み進むにつれて、もう後には引けない、三島文学にハマってしまう。ちょっと面倒くさい男、清顕が物ごとをどんどん複雑にしていくように感じるも、全てにおいて描写が芸術的で美しい。死や仏教、輪廻がテーマになっているが、4作目の「天人五衰」で全てを虚無にし、市ヶ谷の陸上自衛隊駐屯地での自死を選んだことで、結局はどこにもたどりつけない、三島の生涯をかけた作品だったのか。人生において大切なものとは何なのかという、とても強い問いが投げかけられている。
劇場でひとときを過ごすということ
初舞台化された今回の『豊饒の海』は、4部ある作品を一つずつ順に並べていくのではなく、第1部の「春の雪」を全体のベースにし、そこに第2部「奔馬」、第3部「暁の寺」、第4部「天人五衰」を組み込むという方法を取っている。すべての物語が同時に起こっていくという構成だ。劇場で過ごす、その空間と時間は日常に潤いを与えてくれるひとときでもある。
*『豊饒の海』紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
*過去の記事『春の雪 豊饒の海(一)』
豊饒の海 第四巻 天人五衰 (てんにんごすい) (新潮文庫)
- 作者: 三島由紀夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1977/12/02
- メディア: 文庫
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