きょうも読書

言葉の迷路を彷徨う

20世紀の芸術を変えた「バレエ・リュス」

 

先鋭的な芸術として生き返らせた
ニジンスキーとディアギレフ

 

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バレエ・リュス 踊る歓び、生きる歓び

 

バレエ・リュスは奇跡のロシアバレエ団

 バレエ・リュスはロシア出身の芸術プロデューサー、セルゲイ・ディアギレフが主宰したバレエ団である。1909年にパリのシャトレ座で旗揚げをしてからディアギレフ死去後の1929年に解散するまでの20年、ロシア革命や世界大戦など慌ただしい世界情勢のなか米国ツアーを成功させ、パリを中心として活動した。一度は「低俗なエンターテイメント」と呼ばれたバレエの地位を引き上げ、今日のモダンバレエの基礎を築いた。
 フォーキン、ニジンスキー、マシーン、バランシンらが独創的な振付を行い、ストラヴィンスキードビュッシーR.シュトラウス、サティらが音楽を担当。そして、マティスピカソ、ブラック、ユトリロローランサン、ミロ、シャネルなどが衣装・美術を手がけた。まさに時代を代表する芸術家が結集する奇跡的な集団で、バレエの魅力を復権させ、先鋭的な芸術として生き返らせた。

 

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ワーツラフ・ニジンスキー  Vaslav Nijinsky 1889-1950
伝説的なスター・ダンサーにして振付師。『薔薇の精』で見せた驚異的な跳躍、『牧神の午後』や『春の祭典』の斬新な振付で有名。振付では当時こそ不評で大騒乱を巻き起こしたが、現代ではバレエに革命を起こしたと高く評価されている。

 

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セルジュ・ディアギレフ  Serge de Diaghilev 1872-1929
バレエ・リュスの創始者。天才を見つける天才。常に莫大な借金を抱え、何度も破産一歩手前に追いつめられながらも芸術面では妥協せず、多くの才能を発掘育成し続けた。

 

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ミシア・セール  Misia Sert 1872-1950
20世紀初頭のパリ、ベル・エポックのミューズと呼ばれた。ルノワールロートレック、ボナール、ローランサンの絵画のモデル、プルーストコクトーの小説のモデルともなった。バレエ・リュスへはパトロネスとして終生変わらぬ支援を行った。

 

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ココ・シャネル  Coco Chanel 1883-1971
20世紀を代表するファッション・デザイナー。『シャネル』創業者。コルセットから女性を解放し、旧来の華美な女性服をシンプルでスポーティなものに一変させた。バレエ・リュスの衣裳デザインも手掛けた。

 

人を惹きつけてやまない魅力

 バレエ・リュスの誕生からすでに100年以上、今なお人を惹きつけてやまない魅力はどこにあるのでしょう。男性群舞の魅力、跳んだまま降りてこなかったと言われるニジンスキーの跳躍、「官能的」と評された艶やかな色彩、そのイメージは万華鏡のようです。当時、スキャンダルを起こした『牧神の午後』『春の祭典』『パラード』といった作品は、今の目から見ても「バレエ」を超えた魅力、イメージを突き破るような存在であり続けています。

 『薔薇の精』『レ・シルフィード』といった一見「バレエ」らしく優雅に見える作品も、実は実験的な作品です。若い振付家ミハイル・フォーキンがチャイコフスキー三大バレエ(『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』)のような全幕バレエに、挑む形で振付けられた作品だからです。フランスで瀕死の状態にあったバレエを蘇らせたのはバレエ・リュスでした。当時のバレエに若い息吹を吹き込んだバレエ・リュスは、バレエに芸術としての生命を与え、その輝きは今も衰えません。
(舞踊史研究家 芳賀直子)

 

『牧神の午後』ステファヌ・マラルメ

牧神は眠る
ニンフが彼をあざむく
置き忘れたスカーフは彼の夢を満たす
帷幕(いばく)が下され
すべての記憶の中で詩が始まる

 この日、ニジンスキーが踊ったバレエ演目『牧神の午後』は、大きなスキャンダルを巻き起こしました ...  

 

 

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ステファヌ・マラルメ(Stéphane Mallarmé, 1842-1898)
アルチュール・ランボーと並ぶ19世紀フランス象徴派の代表的詩人。代表作に『半獣神の午後』『パージュ』『詩集』など。

 

牧神の午後 マラルメを読もう (慶應義塾大学教養研究センター選書)

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マラルメ詩集 (岩波文庫)

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