きょうも読書

言葉の迷路を彷徨う

2017-01-01から1年間の記事一覧

『ヴィヨンの妻』 太宰 治

燦然と輝く栄光の中で絶望と死を彷徨った悲しき天才 『ヴィヨンの妻』あらすじ 病弱な4歳の息子と、酒を飲んでばかりの夫を待つ「私」。いつも通り、夜中に帰ってきた夫は、珍しく子どもの心配をするなど、妙に優しい。その時、1組の夫婦が家に乗り込んで…

『舞姫』 森 鴎外 

『舞姫』あらすじ 父を早くに亡くし、母の手で育てられた秀才・太田豊太郎は某省から派遣されベルリンに留学する。そこで、踊り子のエリスと出会い、恋愛へと発展するも、留学生仲間から嫉妬、中傷され免官になる。それを知った母は自殺してしまう。天方大臣…

『山月記』 中島敦 江守徹の朗読

作品の魅力を引き出す江守徹の朗読 李陵・山月記 作者: 中島敦 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2013/07/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 『山月記』 山月記は、昭和17年(1942)に発表された中島敦の短編小説です。精緻な文章から今でも…

芥川賞と直木賞の違い

対象となる作品が違います 芥川賞 各新聞や同人誌を含む雑誌に発表された純文学短編作品中、最も優秀なものに呈する賞。ちなみに純文学とは、大衆文学や小説一般に対して、商業性よりも「芸術性」「形式」に重きを置いていると見られる小説を総称する、日本…

年収と読書量は正比例する

ともかくむさぼるように本を読めそうすれば出口は必ず見つかる 本書『ほんとうに頭がよくなる「速読脳」のつくり方』は、速読に関する書籍ですが、実は「読書と年収の関係について」の福音とも思える記述があります。そこに注目してみました。以下は本書から…

芥川龍之介 『羅生門』 近藤サトの朗読が秀逸

或る日の暮方の事である一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた下人の行方は、誰も知らない ... 羅生門・鼻 (新潮文庫) 作者: 芥川龍之介 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2005/10 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 38回 この商品を含むブログ (9…

『接待の一流』 田崎真也 おもてなしは技術です

いい店を頼むよ ...この店僕も初めてなのでなんでこんな店を予約したんだあの店にいけば安心して任せられるこの料理でいいこちらの方、ワインに詳しいので選んでもらって こんな発言は「もてなしベタ」 接待の席で、こんな発言をしたことのある人は、立派な…

『沈黙の春』 レイチェル・カーソン 池上彰厳選

私たちはだまされているのだその行く先は禍いであり破滅だ 世界史に大きな影響を与えた1冊 池上彰が厳選した「世界を変えた10冊の本」から、環境問題の古典的名著でもある、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」を取り上げました。 私たち人間の思い上がりが…

古事記・日本書紀 ドラマティックな物語 

世界で最も古い国、日本そのルーツが古事記にあっていまの私たちと繋がっている 自国の起源を知る 世界で最も古い国、日本。そのルーツがこの古事記や日本書紀にあって、現代の私たちとも繋がっている。よくもまあ、こんなかけがえのないものを遺してくれた…

『阿弥陀堂だより』 南木佳士

そう、こういう小説を読みたかったんです 普段、この手の小説はあまり手に取らないのですが、読メで取り上げられていたので軽い気持ちで読んでみました。しかし、これが予想外に素晴らしく、久しぶりに良い作品に出会えました。お医者さんが書いた小説です。…

ガガーリンと神と宇宙飛行犬ライカ

まだ地球に帰還する技術がなかった? 「地球は青かった」は日本だけ?天に神はいたのか? 1959年のルーマニアの切手宇宙船スプートニク2号で飛び立った史上初の宇宙飛行犬ライカ 宇宙飛行犬ライカ 1957年11月、ライカという名前の宇宙飛行士ならぬ宇宙飛行…

『ぼくらの頭脳の鍛え方』 立花隆 佐藤優

「知の巨人」と「知の怪物」が空前絶後のブックガイドを作り上げた 必読の教養書400冊 今、何をどう読むべきか? どう考えるべきか? 「知の巨人」立花隆と「知の怪物」佐藤優が空前絶後のブックリストを作り上げた。自分の書棚から百冊ずつ、本屋さんの文庫…

百人一首 「歴史的仮名遣い」

昔のかなづかい「歴史的仮名遣い」 昔は今とかなの読み方がちがいました。代表的なルールと例を紹介します。 ① 語の頭以外の「はひふへほ」は「わいうえお」と読む。かは → かわこひ → こいいふ → いうにほい → におい ②「ゐ」は「い」、「ゑ」は「え」、「…

『菜の花の沖(二)』 司馬遼太郎 嘉兵衛、船を持つ

あらすじ 江戸時代後期、日露関係のはざまで奇数な運命をたどった高田屋嘉兵衛の生涯を克明に描いた雄大なロマン。(全六冊) 海産物の宝庫である蝦夷地からの商品の需要はかぎりなくあった。そこへは千石積の巨船が日本海の荒波を蹴たてて往き来している。…

『ヴェニスの商人』 シェイクスピア

シェイクスピアは芝居を通してこの世のありようを描き、微妙な心理描写を付け加える台詞の天才 ウィリアム・シェイクスピア William Shakespeare1564-1616 国籍はイングランド王国。劇作家、詩人。約37編の史劇・悲劇・喜劇を創作。47歳で突如隠退、52歳没。…

芥川龍之介 『河童・或阿呆の一生』

芥川龍之介の芸術と生涯その魂の旋律に耳を傾けてみよう 河童・或阿呆の一生 (新潮文庫) 作者: 芥川龍之介 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1968/12/15 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 34回 この商品を含むブログ (84件) を見る 芥川龍之介(あくたが…

『モモ』 ミヒャエル・エンデ それは時間の哲学

時間とは、生きるということ、そのものです モモ (岩波少年文庫(127)) 作者: ミヒャエル・エンデ,大島かおり 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2005/06/16 メディア: 新書 購入: 41人 クリック: 434回 この商品を含むブログ (297件) を見る あらすじ 町は…

「時々、神様に出会った」 ビンボー魂 風間トオル

貧乏だから辛いのではなく空腹だから辛いのです ビンボー魂 おばあちゃんが遺してくれた生き抜く力 作者: 風間トオル 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2016/03/17 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 風間トオル 1962年神奈川県生まれ。東…

「バベルの塔」展 東京都美術館 

神が人間の言葉を混乱させる 人が「天まで届く塔のある町を建てよう」と考えたのは 、煉瓦を焼くという新技術、そして漆喰よりずっと粘着力のあるアスファルトという新素材を発見したからでした。 ところが、人間の計画を知った神は「降って行って、直ちに彼…

特別展「茶の湯」 東京国立博物館 

特別展「茶の湯」 東京国立博物館 本展示会は、おもに室町時代から近代まで「茶の湯」の美術の変遷を大規模に展観するものです。「茶の湯」をテーマに名品が一堂に会する展覧会は、昭和55年(1980)に東京国立博物館で開催された「茶の美術」展以来、37年ぶり…

『檸檬』 梶井基次郎 無名のまま31歳で生涯を終える 

無名のまま31歳で生涯を終えたがのちに「檸檬」が高評価を受けその名が知られる 梶井基次郎(かじいもとじろう) 明治34年(1901)、大阪に生まれる。京都大学卒業。この頃より結核、神経衰弱を発症し、以後病魔に苦しみつつも放蕩生活を続け、夏目漱石などに…

中島 敦『山月記』 わずか8か月の輝き 

わずか8か月の輝き文学史に流れて消えた彗星 李陵・山月記 作者: 中島敦 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2013/07/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 文芸史に名を残した中島敦 今回は、芥川賞候補となり『山月記』『李陵』などの名作を生…

『変身』 カフカ 不思議な海外文学最高傑作

ある朝、夢から目をさますと一匹の巨大な虫に変わっていたのです 変身 (新潮文庫) 作者: フランツ・カフカ,Franz Kafka,高橋義孝 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1952/07/28 メディア: 文庫 購入: 18人 クリック: 359回 この商品を含むブログ (359件) を見…

『旧約聖書』 罪と罰

罪と罰 突然ですが、聖書は新約聖書と旧約聖書のどちらが面白いのでしょうか? どちらも読むのに時間が相当かかるし、簡単ではありません。ここではまず重いテーマですが、人類誕生からの永遠の課題である「罪と罰」について流れを掴んでポイントを押さえて…

『人間万事塞翁が丙午』 青島幸男 

人間万事塞翁が丙午 (新潮文庫) 作者: 青島幸男 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1984/08 メディア: 文庫 クリック: 6回 この商品を含むブログ (2件) を見る 青島幸男の直木賞受賞作品 「人間万事塞翁が丙午」は青島幸男の小説で、著者の母をモデルとしてい…

『菜の花の沖』(一) 司馬遼太郎

悲惨な境遇から海の男として身を起しついには偉大な商品に成長していく 菜の花の沖(一) (文春文庫) 作者: 司馬遼太郎 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2015/07/03 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る あらすじ 江戸後期、淡路島の貧家に生…

ユリイカ 特集 米原万里

ユリイカ2009年1月号 特集=米原万里 作者: 沼野充義,佐藤優,多田富雄,池内紀,秋山豊寛 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2008/12/27 メディア: ムック 購入: 13人 クリック: 42回 この商品を含むブログ (20件) を見る 米原万理特集 また米原万里かと言われそ…

『金閣寺』 三島由紀夫

いつかきっとお前を支配してやる僧侶による金閣寺放火事件 金閣寺 (新潮文庫) | 三島 由紀夫 |本 | 通販 | Amazon 『金閣寺』冒頭部分 『金閣寺』は三島由紀夫の代表作でもあり、昭和31年度の読売文学賞を受賞した作品。冒頭は次のように始まります。 幼時か…

『立花隆の書棚』 知の巨人の20万冊

立花隆の書棚 作者: 立花隆,薈田純一 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2013/03/08 メディア: 単行本 クリック: 4回 この商品を含むブログ (15件) を見る 20万冊の書棚を写真撮影 知の巨人、立花隆驚異の蔵書を書棚ごと撮影して紹介。20万冊にも達する…

『百人一首』 藤原定家 

百人一首の誕生 「百人一首」は、藤原定家がまとめた小さな歌集です。定家(さだいえ)は優れた歌人で尊敬を込めて、定家(ていか)と呼ばれるようになります。 定家の日記によると、「百人一首」が完成したのは、1235年5月27日、鎌倉時代の初め。定家は、飛…