きょうも読書

言葉の迷路を彷徨う

ミュシャ展 《スラヴ叙事詩》 奇跡の来日

 

ミュシャ展

ミュシャ展

 

 

チェコ国外での公開が初

 平日にもかかわらず多くの人が来ています。アールヌーボーの極みであるポスターなどで有名なミュシャを楽しみに来ている人も多いのでしょう。今回はチェコ国外への持ち出しが初となるそうで、滅多にないチャンスです。これを見逃すとたぶん一生お目にかかることはないでしょう。なんと《スラヴ叙事詩》20点すべてがこの日本、国立新美術館に来ているのです。チェコの皆さま、ありがとうございます。

 

圧倒されるスケール感

 会場に入るとまず眼前に現れるのが、6m×8mの《原故郷のスラヴ民族》。そのスケールと画中からむけられる眼差しに一気にミュシャの歴史世界へと引き込まれます。全20点は、チェコ人をはじめとするスラヴ民族の苦難の歴史を描き出したもの。国民画家でありたかったミュシャチェコ語ではムハといいます。

 

《スラヴ叙事詩》の舞台

 弱小のチェコ人が強大なドイツ人に対抗するためのバックボーンとしてスラヴ人の存在があります。スラヴ及びスラヴ人とは、じつは言語学上の概念でインド・ヨーロッパ語族の中のスラヴ語派のこと。国境を越えて広がる諸国民はドイツ人にも対抗できそうですが、実際は宗教も文化も全く異なります。スラブ人の団結と言っても詩人の夢であり、ヤン・コラールの詩集「スラーヴァの娘」でスラヴ人の兄弟愛と栄光の未来を最初に歌い上げました。「スラヴ叙事詩」はつまり、ヤン・コラールのロマン主義の、絵画における遥かな反響に他ならないのですね。

 

ミュシャ

開催期間:2017年3月8~6月5日
場所:東京・国立新美術館
ミュシャが晩年の約16年を捧げた超大作《スラヴ叙事詩》全20点が奇跡の来日。最大で6m×8mに及ぶ巨大な油彩画は、古代から近代にいたるスラヴ民族の苦難と栄光の歴史を映し出します。チェコ国外でまとめて公開されるのは世界初。出世作である華やかなアール・ヌーボー作品も多数並び、ミュシャの全容が見られます。