きょうも読書

言葉の迷路を彷徨う

アメリカが「世界の警察」をやめたら

 

アメリカが「世界の警察」をやめたら
同盟国は国債を売りに走り
ドルは暴落することに

 

 

本書『ニュースの”なぜ?”は世界史に学べ2』から備忘録用として要約しています

 

 

ユーロの信用が一気に低下

 EUは、移民問題と統一通貨「ユーロ」の価値が下落したままという深刻な問題を抱えている。2009年、ギリシア財政赤字の危機的実態が判明し、ユーロの信用が一気に低下した。ギリシアの国家財政が破綻し、債務不履行(デフォルト)となる不安から、ギリシア国債が暴落し、それにつれてユーロも下落。これを「ユーロ危機」という。

 
EUはなぜギリシアを見捨てないのか

 ユーロ危機の引き金となったギリシアは、EUの問題児。それにもかかわらず、なぜEUギリシアを見捨てずにいるのか。理由のひとつは、ギリシア地政学的重要性。19世紀以来、イギリスやアメリカ、ロシアとの間で駆け引きの舞台となってきたこと。東地中海に突き出た位置にあるギリシアを重要視しているロシアと、ロシアの進出を食い止めたいEUの間で綱引きをしているため、問題児であってもギリシアを支援せざるを得なかった。各国が争奪を繰り返す、「地中海の朝鮮半島」ともいえるのがギリシアだ。

 

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「世界のお金」になりたいユーロ

 もうひとつ、EUギリシアを手放せない理由は、統一通貨「ユーロ」の価値下落にあった。それは目指す基軸通貨としての問題である。ここで「通貨の価値が何で決まるか」について考えてみる。お金は紙切れにすぎない。なぜ、ただの紙切れに価値があるのか。
 もともと紙幣は、金貨や銀貨と交換していた。「紙幣〇枚と金貨〇枚を交換しよう」という具合に取引が成立していた。つまり、金貨が本当のお金で、紙幣は「交換券」だった。これを金本位制という。そうした時代が長く続き、第2次大戦後は金と交換できる米ドルが、貿易決済で使われてきた。

 
アメリカが貿易赤字国に転落

 ところが、1971年、この金ドル本位制が突然、終焉を迎える。当時、世界でいちばん金持ちだったアメリカが、貿易赤字国に転落する。日本やドイツの自動車をアメリカ人がたくさん買ってしまったから、その代金を払う必要が生じた。それまで金とドルを交換する金本位制で取引していたから当然、日本やドイツの自動車会社は代金を金で請求する。その結果、アメリカが貯め込んでいた金(ゴールド)が、東京やドイツのフランクフルトに流出し、底を突きそうになった。

 
ニクソンショック

 そこで、当時のアメリカ大統領のニクソンは突然、「今日から金とドルの交換をやめる」と宣言した。世界の経済秩序を変革する大きな決断を他国に知らせずに、突然実行した「反則技」だった。こうして金ドル本位制が突如終わりを迎えた。これをニクソンショックという。
 しかし、アメリカは貿易赤字を続け、手持ちの金はほとんどないにもかかわらず、経済破綻することなく世界中で戦争を行うことができた。

 
ドルが持つ価値

 なぜだろうか。それは、金本位制の終焉後も、ドルが価値をもっていたからである。流通量と信用の点で他の通貨を圧倒していたからだ。基軸通貨として世界中で流通していたから、ドルは価値をもつことができたのである。
 たとえば、仮にアフリカのジンバブエ共和国が「石油を買いたい」といい、そして「代金はジンバブエ・ドルで払う」といわれたらどうか。ジンバブエという国の知識がある人であれば、「米ドルで払ってほしい」というだろう。ジンバブエは最貧国のひとつで通貨は紙くず同然で、財政破綻を意味する。

 
同盟国がアメリカの国債を引き受ける

 その点、アメリカという国家が財政破綻することは考えにくい。アメリカは多額の借金を抱えているが、一方でアメリカが発行する国債(借金証書)は必ず売れる。アメリカの同盟国が分担してアメリカの国債を引き受けてくれるから、アメリカはいくら借金をしても大丈夫なのである。
 財政破綻するリスクがきわめて低いということは、ドルが暴落する心配もない。だから、米ドルは金本位制をやめたあとも、価値をもち続けることができた。

 
アメリカの国債を最も多く買う日本

 ちなみに、アメリカの国債を最もたくさん買っているのは、日本だ。近年、中国が日本を上回る時期もあったが、最近は中国経済が下り坂のため、保有するアメリカ国債を売ってドルを調達している。
 では、なぜ日本はアメリカの国債をそんなに購入しているのか。敗戦国で「子分」になったから逆らえないという面もあるが、いちばんのポイントは「安全保障」である。

 
米ドルの信用を支える軍事力

 北朝鮮や中国の軍事的挑発にさらされている日本にとって、日米安保条約のもと、世界最強のアメリカ軍がバックについてくれることほど心強いことはない。米ドルの信用を支えているのは、米軍の軍事力だ。
 アメリカが「世界の警察」の役割を果たしているうちは、日本をはじめ世界中のアメリカ同盟国がアメリカ国債を買う。逆にいえば、アメリカが「世界の警察」をやめたら、同盟国は国債を売りに走り、ドルは暴落することになる。そういう意味では、アメリカが完全に「世界の警察」をやめるというシナリオは考えにくい。

 

 

 

本書『ニュースの”なぜ?”は世界史に学べ2』では、日本人が知らない101の疑問に答えています。以下はその一部です

・トランプを支持したのは誰か
アメリカとロシアは仲良くできるのか
プーチンはトランプをどう見ているのか
・フランスがドイツを恐れるのはなぜ
・イギリスの「EU離脱」はなぜ起きたか

プーチンはなぜ安倍首相と仲良くするのか
プーチンが日本と手を組む意外な理由とは
・なぜ共産主義の中国が経済成長できたのか
・なぜ中国は領土を広げようとするのか
・中国が尖閣諸島に執着する理由とは

・なぜ朝鮮半島は2つに割れたのか
金正男が暗殺されたのはなぜか
アメリカは北朝鮮を攻撃するつもりがあるのか
北方領土問題は解決するのか
・日本が北方領土を取り戻すシナリオとは

など

 

 

 

 

 

 

 

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